いつもの風景、いつかの風景

目に入れても痛くないほど溺愛しまくっていた私の大事なルーテシアは、来月、九州へ旅立つことになった。

クルマで走ることに喜びを与えてくれた素晴らしいパートナーであり、いつも美しい姿で私の帰りを待っていてくれた。何よりも知らない世界、それまで知り合えなかった人々と私を繋いでくれた。今も大好きなクルマなことに変わりはないが、たくさん愛して、愛し切ったから未練はない。本当に私に似合うクルマだったと今でも自画自賛は変わらない。

前回のお話の通り、人生にはタイムリミットがある、という実感を得た私は、「今乗りたいクルマに乗る」という行動を実行した。あれこれ考えている暇はもうない。そうしたいと思ったらそうする。後先など考えずに。

ルーテシアに出会う前は「次はMT車に乗る!」と心に決めていた。そして、ルーテシアと出会った。幸せだった6万5千キロ。

次のパートナーも、たくさんの未知の世界へ私を連れて行ってくれることは間違いない。フランス車に乗った後に選んだのは、初めての国産中古車。

その子を見に行くために久々に圏央道を北へと走った。
厚木にさしかかる少し前、運良く橋を駆け抜ける新幹線が見えた。それを見て、今度はいつ京都の学校へ行けるのだろうと涙が溢れてきた。世の中も変わってしまったが、私の身体も変わってしまったから。しかし、そこでセンチメンタルに浸っている場合ではない。変わらない圏央道の風景が流れて行くことに幸せを感じた。ここにまた戻って来られて、こうして運転出来ている。これは、治療から復活して最初に湘南大橋をルーテシアで渡った時と同じ気持ちだ。治療中の通勤は電車だったので、東海道線の中から湘南大橋を渡るクルマたちを眺めて落ち込んでいた。またあそこを走れるようになるのだろうか、と絶望的な気持ちになっていた。

でも、幸運なことに私はまだこうして生きていて、あちこち不具合が残ってはいるものの一応元気だ。そして、もうすぐ新しいパートナーと湘南大橋を毎日渡ることになるだろう。

好きな人たち。好きなクルマ。好きな活動。毎日感謝しかない。

皆さんに新しいパートナーを紹介出来る日を楽しみにしている。