運転するのはどの人ぞ

私が住まう湘南という地域は、休日に134号線を走ろうものなら屋根を開けて颯爽と走り抜けたくても渋滞にはまっているカップルを多く見かける。ひと昔前のようなパープリンなカップルはさすがに減ったように思うけど(その層は今では高級ミニバンに乗っているのだろう)、ほぼ100%が男性が運転、女性が助手席だ。クルマ自体がカッコ良かったりすると目がいくので、「あー、逆なら素敵なのに」と思わずにはいられない。

私なら開けっぴろげのオープンカーの助手席なんて恥ずかしくて無理だ。所在なさげにちんまり座って微動だにしない自分を想像出来る。しかもマスク帽子サングラス長袖と紫外線対策の防御姿で果たしてそこに座っていられるのか(以前、このような姿の女性が座っているのを目撃した。多分女性だと思う。オープンじゃないほうが良いんじゃないかと思った)。
昔の自分ならタバコくわえてふてぶてしく女王様然と座り、バカップル出現と思われていたかもしれないが今はそんなことは到底出来ない。もし私にオープンに乗る恋人がいたら、「屋根を閉めるか私に運転を譲るか、どちらかを選びなさい」と選択を突きつけるだろう。「そんないちいちどんな奴が乗ってるか周りのクルマは気にしないよ」と諭されるかもしれないが、最低でも前のクルマだけはバックミラーで見えるはずだ。それだけでも嫌だ。

私はフェミニストというわけでもないが、このような性格なので一般的な女性枠には収まらないで生きてきた。もう少し若い頃は確かに「女性上位万歳!」と思っていたが、最近ではむしろ「そろそろ女性も意識を変えたほうがいい時代なのでは」と思うようになった。女性は自分らの怒りや不満を対象に向かって表現出来る時代にはなったが、その怒りや不満はどこから来ているかというと、およそ100年も前に伊藤野枝が言い放った「奴隷根性」から脱却していないように思える。もはや呪いだ。

さて、「いつも私が運転してばかりで夫(彼氏)は運転しない」という不満も存在するのだろうか? 街ゆくクルマをざっと見ると、圧倒的に男性の運転が多いので、その点に関しては平和的選択がなされているのだろうか?

私の周囲をリサーチしてみると、運転する男性は「妻がそもそも免許を持っていない」「免許を持っているがペーパーだ。原付しか運転しない」「免許はあるし運転はするが苦手なようで、一緒に出かける時は自動的に俺がいつも運転」「妻が運転している時にクルマを壊したのでそれ以来運転に消極的になった」などの理由。やっぱクルマは男が運転しないと!女は黙って横に乗ってろ!みたいな時代錯誤野郎はいなかったので良かった。

一方で運転する女性。「彼氏はクルマ無し。免許は持ってるけどAT限定だから、ルーテシアはMTも運転出来る私が運転♡」(by うちの娘)、「夫は免許を取る機会がなくここまで生きてきてしまった。都内住みだからクルマは要らないけどレンタカーを借りたら私が運転」「車種がダサいので彼氏のクルマには出来るだけ乗りたくなくて自分のクルマを出すけど、彼氏には絶対に運転させない。私のクルマだから」などの理由。皆、イヤイヤ運転している様子はない。

どっちが運転するかは状況にもよるだろうし、どっちのクルマかにもよるだろうし、基本的に得意なほうが運転すればいいと思う(以前、女性の運転が下手という前提で作った自動車メーカーの宣伝が炎上してたな)。それが現実的だし、きっと一番平和だ。

私自身は男性を横に乗せるということは滅多になく、普段は「どっちが運転する問題」とは無縁。ただ、唯一の例外がクルマ仲間と一緒の時。積極的に私のルーテシアを運転してもらい、私は助手席におとなしく座っているようにしている。私以外の人間が運転する自分のクルマの挙動に興味があるし、シフトチェンジのタイミングなど他の人の操作を眺めているのは意外と楽しい。自分のクルマを客観的に感じる機会でもあるし、自分では気づかない違和感などに気気づいてもらえるメリットもある。助手席のシートの座り心地がえらく悪いのだけが気になるのだけど、自分のクルマの助手席というのはなかなか面白い。とは言え、当然信頼出来る人にしか運転はお願いしない。

フェアレディZは高確率でおじいさんが運転、隣におばあさん、というのをよく見かける。それもなかなか素敵ではあるのだけど、おばあさんが運転ならもっと素敵だろうなあ、と思う。週に何度かすれ違う、シルビアを走らせるカッコ良過ぎる60代と思しきおばさんがいるが、車高の低いクルマとクールなおばさんは親和性が高いんじゃなかろうか。

ルーテシアのその先は2席のオープンにしようと思っている。そして、「たまには助手席に乗りたい」という奇特な男性がいたらお迎えに行くことは嫌ではない。そして、自分のクルマでも屋根が開くと助手席に乗ったら恥ずかしいのかどうかも、試してみたい気がする。

隣の月刊ショパンを立ち読みした時に目に入った。サーフボードは余計だが、クルマはカッコいい!
イラストは鈴木英人さんであろう。