クルマで巡らない「京都市京セラ美術館」

いま、私は打ちひしがれている。

3月はかなり忙しかった。2週連続で京都に行ったし、ほっと一息つく休みもなく、沢山の人々と会っては話をし、最後はダメ押しでサーキットにも行った。そして、まだ疲れが取れない・・・体もだが、心を京都に置いてきてしまったようだ。

これまで散々京都へ通学してきたのに、なぜ今回はこんなに抜け殻になってしまったのか。卒業したせいもあるだろうが、私の心震える1日をここに書き留めておきたい。

その日、夕方からキャンパスにて卒展の撤収作業があるため、それまでの空き時間を利用してついに「京都市京セラ美術館」へ挑むことにした。私は「ここは自分にとって特別な場所になる」という予感がするところはあえて後回しにする癖がある(パリやNYもそうだった)。ようやく時は来た。

結論から言うと、

最高

もうね最高ですよここは本当に何もかもが。相当好きな金沢21世紀美術館をぽーーんと追い越して、私の国内ベストワンにあっけなく躍り出た。

この日はコレクション展と現代美術を堪能したのだが、今回は美術館それ自体が最高だったのでそのお話を。

ついにここに来た!!I am here. 前回はお向かいの近代美術館へ行ったので、こちらには足を踏み入れてなかったのだ。リニューアルした時からずっと憧れていた。コロナになっていなければアンディ・ウォーホルを見に来る予定だったのだが(結局この展覧会は延期になって開催され、日程が合わず見られなかった)、その後なかなか訪れるチャンスがなく・・・このファサードの前に立っただけで、むせび泣きそうに。

これが市立美術館という恐ろしさ、羨ましさ。・・・国内の美術館では最古の建築だったそうだ。京都万歳。

この空間の尊さを何と表現したら良いのか・・・展示をひと通り見たあとでも、意味もなく館内をうろついてしまうのを止められない。この、欧州風なのだけどどことなくチグハグな感じがたまらん。建築の専門家なら上手く説明出来るのだろうけど。

裏には日本庭園まで!! お池には大きな魚(鯉?いやもっとワイルドだったような)もいた。散策したり、お池を眺めながらぼーっとしたりも可能。ここだけ別世界のような静けさだ。

今回は、アーティストと言うより職人さんに近いような手仕事で芸術を生み出す、ニッポンの作家さんたちを堪能。さらにはもちろん市民のためのギャラリーもあるので、地元の小学生の書道展などもやっていたりする。
東山キューブから庭園をのぞむ。どこからのアングルも絵になるのでため息しか出ない。
カフェの待合椅子に座ってふと上を見上げたら、こんな光が。やはり天井が高いっていいねぇ。

大鳥居の朱を拝みながらカフェタイム。お向かいは前回訪れた近代美術館。人々の流れを眺めながら「やっぱみんな京都好きだよね」って思う。歴史にしたって、いつの時代も京都は特別だった。現在ではそれ以外にもグルメなど、それぞれに楽しみ方があるのが京都の魅力なんだろう。私の地元である鎌倉はそれに比べたら一瞬の輝きだったなあ、と思う。まあ、鎌倉は都ではないので当然なんだけど。

京セラ美術館。一言で言えば、クラシックとモダンの融合が高いレベルでひたすらに美しい場所だった。コレクション展では近代京都画壇の作品をまじまじと眺められるかと思えば、新館の東山キューブでは現代作家さんたちの様々な作品を楽しめる。疲れたら日本庭園でゆっくり休める。ウロウロしているだけでも心躍る美術館であることは間違いない。こんな市立美術館を持つ京都市民の皆さんが羨ましい。

そ、し、て、


極めつけはこの屋上テラス。
ここはチケットを買わなくても入れるエリア。この場所を発見した瞬間、私の京都お気に入りスポット第一位に(それまでの第一位は三条大橋)。この日も本を読んだりひなたぼっこしている人もチラホラいたが、ここまで上がってくる人はとても少ない。眼下には先ほどの日本庭園。私が写真を撮っている位置は階段のようになっており、腰かけたり寝そべったり出来る。私はここで長いこと物思いに耽っていたのだが、ふと南側の山の上に寺院らしき大きな屋根を発見した。地図で確認してみると、、、、あれは・・・知恩院?

知恩院!!実家は浄土宗なのにこれまで一度もお参りしていない。今から行くしかない!!と美術館に別れを告げ、タクシーに飛び乗ったのだった。そして知恩院でも心震える体験が待っていたのだった。

今でも、この美術館の前に来た時のことを思い出すと、胸が高鳴る。あんな気持ちになったのはとても久しぶりだ。続く。