BLOG スーパーウーマンと言えば

 

皆さんは、誰と同じ生まれですか?

私の誕生日は、クララと同じです。クララと言っても「アルプスの少女ハイジ」に出て来るほうではなくて、クララ・シューマン。
ロベルト・シューマンの奥様ですが、こういった紹介の仕方はかなり彼女に大変失礼かもしれません。

 

若い頃のクララ。可愛すぎる。天は二物どころか何物も与える・・・・

彼女は若い頃から演奏旅行をするほどの凄腕ピアニスト。パパの弟子だったロベルトと恋に落ちますが反対されたため、パパに対して裁判まで起こしてロベルトと一緒になります。結婚後は8人の子供たちの育児、家事に加え演奏旅行や創作活動、そして夫ロベルトが病になれば代わりに楽団を指揮したりと、とにかくスーパーウーマンです。そんなシューマン家にある日、年若いピアニストの青年がやって来ます。名前はヨハネス・ブラームス。よくある音楽室の肖像画ではむさ苦しいしかめっ面のオッサンですが、若い頃は見ての通り金髪のイケメンくんだったようです。

 

私は以前からOTTAVAというクラシック専門ネットラジオのリスナーなのですが、何年か前の誕生日に「ブラームスがクララを想って作った曲をかけて欲しい」とリクエストを出しました。パーソナリティの斉藤茂さんは「多分、ほとんどの曲がクララの影響を受けてるんではないでしょうかね~」と言って、ブラームスの交響曲第3番第3楽章のピアノ版をかけてくださいました。ブラームスの交響曲は全部で4つあり、交響曲嫌いな私が唯一全部聞ける貴重な作品群です。

ベルリン・フィルが演奏した音源が私のベスト盤ですが、当時指揮をしていたサー・サイモン・ラトルが「クララの影響を感じる」とライナーノーツに書いていたことが印象深いです(余談ですが、スイスはルツェルンでコンサートに行った時、私の隣の席にラトルが!!反対側の隣にいたジュネーヴから来たおばちゃんと「ラトルが来たわ!」とミーハー炸裂していたのはいい思い出)。ブラームスの室内楽やピアノ作品集も10代の頃から大好きで、基本ドイツ系が苦手な私にはこれまで特殊な例です。すごい感傷的でウェットなんですよね。チェロソナタとか演歌か!ってくらいに。日本人は好きな人たくさんいると思います。

クララの作品ですと「音楽の夜会」という作品がとても好き。一方、夫ロベルトの作品は好きなのがまったくありませんね。私のライブラリには1曲もありません。

クララとブラームス。没後120年たった今でも不倫説は未だに途絶えません。真意は2人にしかわからないことですが、現代の女の私から見てもクララはトップレベルの魅力的な女性であることには間違いありません。たとえ師匠の妻であったとしても、年上のスーパーウーマンに年若いブラームスが憧れと好意を持っても何の不思議でもありませんし、実際、彼は作品が出来上がると真っ先にクララに感想を求めたと聞きます。そういう背景を想像しながらブラームスの作品を聴くと、何かもう切なくて泣けてきます。きっと、クララは彼の生涯で最も大切な存在だったのではないだろうか、と感じさせられます。クララのほうは、スーパーウーマンですから恐らく理性もしっかりした人だったように想像します。だから、夫ある身で年若いブラームスと一線を越えたとはあまり思えないのですが、ロベルトが精神的にやられてからは色々大変だったはずなので、ブラームスの存在が癒しになっていたかもしれない・・・こればっかりは闇の中ですけどね。ロマンティックな想像をしてしまいます。

女として考えられるすべての要素(才能、名誉、美、結婚、子供、仕事、情熱、おまけに年若い恋人?)を手に入れたクララを、私は最大限に尊敬します。でも、ちょっと立派過ぎな気もして畏れ多いんですよね。ですが、こんな素敵な女性と同じ日の生まれだというのは、ミーハー的に嬉しいものです。「作曲家の妻」というカテゴリでは、グスタフ・マーラーの妻アルマのほうが親近感を感じます。年の離れたグスタフに「どうしても」としつこく言われて結婚するも、あまりの亭主関白に嫌気がさし、奔放に浮気をしまくり、悩んだグスタフがフロイトの元へ通ったのは有名な話。結婚する前からやりたい放題だった「ビッチ」アルマのほうが私は好きですね笑。

 

クララを描いた映画で、お気に入りです。

 

 

「クララ・シューマン 愛の協奏曲」 2009年。日本語サブタイトルの定番「愛の~」ってやめてもらえませんかねぇ・・・