路面から匂い立つ焦げた甘い香りと、突き抜ける乾いた轟音に酔いしれながら、我々は何を思うのだろう。それぞれの人生、それぞれの物語。そんな場所で感じる孤独は心地よい。人は、他の誰かになり代われない。不安も痛みも自分自身だけのものだ。だが、幸せな孤独は私を救う。愛しい場所、愛しい人々、愛しい時間。いつでもそこへ戻ってゆける。

by 私

これは自分の卒業制作についてのコメントとして書いた文(ほぼポエム)。冒頭の情景描写の舞台は富士スピードウェイである(以下FSW)。好き過ぎて作品の舞台にしたほど、FSWのグランドスタンドが私にとっての聖地。FSWで繰り広げられる熱きモータースポーツに惚れ込んでいるでもなく、まして自分がここを颯爽と駆け抜けるわけでもなく(体験走行どまり)、なぜにそれほど好きなのか。

確かに数々の思い出や人との出会いもあった特別な場所なのだが、私が愛しているのは特に何もイベントが行われていない、国際レーシングコースにて。練習走行中の車両の音を聴きながら、ひと気のないグランドスタンドで飲むコーヒー。

いつも思うけど消失点が美しいのぅ。

この日はド派手なランボルギーニのグループが走行していた。詳しくない私は車種までわからんけど、どれもいい音してた。あんなクルマでここを走るとは、専門家?それとも金持ちの道楽?でも、都会の渋滞にはまっている姿より、よほどカッコいい。

詩的な場所だなあと思う。

そんなFSW、今回は理由がもうひとつあって。
8月頃にJAF会員の更新お知らせが届き、そう言えばJAFには入ってるけど今まであまりその恩恵を受けたことはない。何かお得情報はあるかな?と、JAFのサイトを眺めていた時のこと。何やらFSWでオートテストなるイベント?が開催されるのを発見した。オートテストとは何ぞや。パイロンで組み立てられたコースを走る競技らしい。クローズドで単独走行だからナリタモーターランドと同じで安心だ。そして何より、聖地グランドスタンドに御礼の報告をしに寄りたい。

ってことで初めてオートテストなるものに参戦してみた。

会場はカートコース。練習走行無しのぶっつけ2本。ステアリングをぐるぐるぐるぐるしているうちにあっけなく終わった。結果は激遅だったが、今回の目標であったペナルティ無しで完走(パイロンタッチや白線はみだし、ミスコースなどのミスは無かった)だけは出来た。。。歩いて回ると広く見えるコースも、Zで走るとものすごく狭く感じる。例えばナリタはちゃんとコースの上を走るけど、今回はカートコースの上にパイロンで違うコースが組まれているので、一瞬迷ったりする。

そして車庫入れ。いつもやってることなのに、なぜこういう時は上手くいかないんだろう。何がってギアチェンジ。いつも無意識にやっているせいか、それが裏目に出てギアが一発で入らず。1本目はそれでものすごいロス。緊張のあまりMTモードにしたはいいけど1速のまま走ってこれもロス。あの車庫入れがこの競技のミソで、あそこで集中力が一瞬切れてしまうのだ。ああ!MTだった私のルーテシアよ。久しぶりにMTが恋しくなった。

他の方たちの走りを見ていると、小さいのが確かに有利に見える。一応ヘビー級だけは車体タイプでクラス分けされているが、あとはビギナーとミドルという自己申告の経験値のクラス分けなので、「あんた絶対ビギナーじゃないだろ」って参加者もけっこういる。軽自動車(普通の軽、コペン、軽トラ等)がやはり上位に来る。でも、色々な車種が走るのを見ているのは楽しい。一般道と同じような車種の構成だ。むしろスポーツカーのほうが少ない。

しばらく眺めていると、あることに気づいた。

速いイコール美しい、が絶対ではないのだ、ということ。片輪を上げて派手な音を立てながら走るクルマは確かに速いし見ていて爽快な感じはするが、私は無駄がなくスムーズに流れるように走るクルマのほうに魅力を感じた。圧倒的に美しい。車種は関係ない。私が目指すとしたら絶対後者のほうだ。目指さないけど。

100台以上参加車がいただろうか。JAFだからか、結構人気の競技会なのね、と感心した。

たまたまお隣になったメガーヌ。素敵なおじさまが乗っておられ、しばしルノー談義を。

参加車の範囲が幅広いので、クルマ集会にありがちな「身内で盛り上がってるようなノリ」が皆無で居心地が良い。もちろん、常連さんのグループはいくつかあるようだが、一人でも気楽に参加出来る雰囲気なのは素晴らしいと思った。

謳い文句に偽りはなく、メットもグローブも要らないし、複雑なルールもない。けれど、せめて練習走行1本あればなあ、と思った。ぶっつけは緊張!!

参加するとJAFや主催者からお土産をもらえるのだが、表彰式の最後になぜか「ベストパフォーマンス賞」を頂けた。早起きの疲れと、自分には関係ないので後ろのほうでボーっとしていたのだが、「Zのオープンの方!」と呼ばれて我に返った。いや、今はオープンには出来ないんだけどね、と心の中で言い訳しつつ・・・人前で表彰されるのは恥ずかしい。

何か派手なパフォーマンスをしたわけではない(当たり前)。ただ、1ヒート目と2ヒート目の間に、元トヨタテストドライバーの先生にドラポジの個人講義をして頂いたのだ。目から鱗の、とても有意義な内容で、ドラポジを大幅に変更して挑んだ2ヒート目、タイムも大幅に短縮された。これを先生がとても喜んでくれて、私にこの賞を与えてくれたらしい。ありがとう先生!!ご指導は普段のドライビングにも生かします!!

FSWのコース図がプリントされた楯、嬉しい!

と、予想だにしないオマケがついてきて、FSWにまたひとつ思い出が出来た。これを機に本格参戦!という気持ちには全くならないが、FSWに行く理由のひとつとしてはアリ。確かにどんな車種でも楽しめる感じだけど、ルーテシアだったらもっと楽しかったのではないかな。考えてみると、今年は2度も賞をもらっている。好きなことで賞をもらえるのは純粋に嬉しいものだ。

その後、冒頭に書いた通り、グランドスタンド参拝をして、帰路に。FSWは自宅から一般道だけで行けるという点も良いし、日本のアイコン富士山の存在がこの場所をさらに美しく見せていると思う。

これからの季節は寒くなり、冬タイヤを持たない私にとっては行きにくい場所になってしまうが、私の記憶の中にはいつでもFSWがあり、そこへ戻って行けるのだ。