小説→漫画→映画になった水墨画

以前、こちらでもご紹介した小説&マンガ『線は、僕を描く』。

もうすぐ続編の小説が出るらしい。いつの間にか映画化され、いつの間にか公開され、いつの間にかNetflix配信されていた。ので、早速見た。

主人公を演じた横浜流星始め、俳優と役柄は一致していたのは素晴らしいと思った。江口洋介なんか、まんま原作のイメージだし。唐突に富田靖子も出て来て、時の流れをかんじたり。そして、活字ではなかなか伝わりにくいであろう水墨画の美しさが一目瞭然なので、物語に説得力があって良かった。一方で、劇伴と主題歌がとても残念。墨をする音、筆が紙を横切る音、水の音など、とても魅力的な音が溢れているのに、わざわざ音楽はいらないと思った。特にエンドロールに流れる主題歌?せっかく美しいクレジットの演出なのに、音楽が台無しに。。。

水墨画は文句なしに美しい。繊細でパワフルで、なのに余韻があるというか・・・西洋画にも日本画にもない美しさがある。大学に入りたてのころ、張り切って水墨画のクラスを受講してみたが、早々に諦めた。私に墨は使いこなせない。そう悟った。白描という、線画を墨で描くのは好きだし得意だ。でも、水墨画は描けない。映画にも出て来る水墨画の最初の基本『四君子』の竹ですでに挫折。

私の道具はすべて安物です・・・・・

お手本。美しい・・・

そんなこともあって、水墨画は憧れだし、描ける人、つまり墨を操れる人を心の底から尊敬している。自分はだめなくせに、周囲には趣味として水墨画をお勧めしている。揃える道具は最初はシンプルだし、水と墨と筆と紙だけで始められる。ハマる人はハマるだろうし、ハマらない人はハマらない。深入りすればお道具類は天井知らずの高価であるが(考えてみたら、全てのアイテムが高い!)その前に諦める人は諦める。大学でも2年前に書画コースが出来た。

書画コース | 学科・コース紹介 | 京都芸術大学 通信教育部(通信制大学) (kyoto-art.ac.jp)

主人公の大学生は事故で家族を失って、唐突に独りになった。独りとは言っても、学友や親戚はいるし、割と充実してそうな大学生活を送っている。たまたま会場設営のバイトで水墨画と出会い、のちに師匠となる先生に「きみ、描いてみない?」と声をかけられる。そこから彼の時間がゆっくり進み始める。

今までも何度も書いてるけど、打ち込める何かを持つことが自分を助けることになる・・・仕事でも趣味でも語学などの学習でもスポーツでも何でもいいのだけれど、必ずこちらが行動するものであることが重要。受け身だけで終わるものはアウトプットする必要がある。まず手を動かすと、そこから何かが始まるということは私自身何度も経験してきた。

現在私が指導して頂いている日本画の先生の個展へ行ってきた。普段教室では絵画以外のことをあまり話せないのだが、この時は先生とクルマとバイク談義に花を咲かせた。「Zを描きなよ」と・・・先生の世代はやはりフェアレディZ=めちゃくちゃカッコいいデザイン!というイメージらしい。
クルマは映り込みという要素があるので描き甲斐はあるが(先生はそのあたりの表現がものすごく上手しかも洒落ている)、いかんせん構造物だからパースが狂うと途端に変な絵になるので難易度が高い・・・が、上手くなるために先生についているのだから臆することないんだ、と思った。考えもしなかったけど、先生と話しているうちにスクーターだって立派にモチーフになるよねってことにも気づけた。

映画の水墨画の話もそうだが、やはり良い師に出会うことは本当に重要だ。自分にとって良い先生というのは、他の人にとっては必ずしもそうではないこともある。医者だってそうだ。世間一般に名医だからと言って自分にフィットするとは限らない。現に、2年前の治療は若い女性の医師が主治医だったが、私は今こうして元気に生きている。他人の評判より自分の判断が大事。ゆえに、私は私の先生たちがとても好きだ。だから、お金を払ってでも先生についている。絵もピアノも。今時YouTubeでいくらでもハウツーを学べる時代だけども。

水墨画に興味のある人は是非この映画を。