雪降る車内で

冬になると思い出す「冬の歌」は色々ありますね。私の世代だと最近話題になっているglobeのDEPARTURESですね。スキーのCMに使われていました。あの歌のメロディと雪降る映像がすごくマッチしていて印象深い作品でした。Keiko歌上手かったなぁ、高音すごかったなぁ。

ある日の夕刻、小田急線に揺られて外を眺めていた時のこと。家々の屋根にはまだ雪がたくさん残っていて、線路沿いもまだ白いまま。珍しい南関東の冬景色。雪が積もったまま静かに佇むクルマを見ていると、ちょうど私のイヤホンからまさに雪の歌が流れてきました。

 

「嘆きの雪」

小谷美紗子のデビュー曲。本当はピアノ弾き語りヴァージョンのほうが悲壮さが伝わっていいのですが見つからず。
初めてこの歌を聴いた時、すごい女の子が出て来たな、と思ったほどインパクトがありました。その後も彼女は悲痛な恋の歌を続々と発表していますが、この歌は当時私も切ない片思いの真っ最中だったので、とても思い出深いのです。

車内の沈黙。
私は彼が好きで好きで仕方がないけれど、彼はそれを受け入れてくれる様子がない。それどころか迷惑なのかもしれない。次の信号が青になって左に曲がればすぐに家についてしまう。けれど彼は非情にも、何の躊躇いもなくウインカーを左に出す。もっと一緒にいたいのに。

ってな具合に、今聴くと「私にもピュアな時代があった」としみじみしてしまうのが、この歌です。

ラブラブな2人なら、車内もほわんほわんな空気になりますが、そうじゃない場合の車内の沈黙は切ないくて苦しいもの。好きな人が手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、その距離が果てしなく感じてしまう、って経験、誰にでもありますよね。

思いが通じて特別な関係になったとしても、次に待っているのがこの歌です。

「火の川」

振られた女の歌なんですけど、聞いていると落ち込んできます。火の川と言うと安珍清姫をイメージしてしまいますが、より愛したほうが辛いという言葉が身に染みてくるような熱くて悲しい曲で大好きです。好きな人がこの世のすべて、という時代が誰にもあると思うのですが、その当時の辛さを蒸し返されます。「私たち粉々になったよ」とか歌わないで!って思いました。

 

 

本人のピアノ弾き語りです。
私は男女間の、理性じゃどうにもならない情念みたいなものを歌い上げる女性シンガーが大好きですが、椎名林檎が上から目線だとしたら、小谷美紗子は徹底的に下から目線です。そこまで1人の男に何もかもを捧げてしまっていいのか?と心配になる世界観。でも、誰でもそういう恋は人生に1度はするものです。

雪を見ると少し切なくなるのは、「嘆きの雪」を思い出すからかもしれません。重くて苦しく、愛おしい空気を。