クルマで巡らない太田記念美術館 その2

クルマで巡らない美術館第17回は、太田記念美術館(東京都渋谷区)です。2回目の登場。

 

明治神宮前駅で降りて地上へ出ると、いつもの土曜日の倍以上の人波。自分のペースで歩けないのって逆に疲れます。太田記念美術館は表参道から原宿駅に向かって歩いて行く途中の右側に少し入ったところにありますが、この日も多数の外国人が鑑賞に訪れていました。

この人波をかいくぐってまでも来た理由はただひとつ。
現在展示されているのは、私が江戸にはまったキッカケのひとつでもある「HIROSHIGE EDO100」、つまり「歌川広重 名所江戸百景」が前期後期に分かれて全部展示されるからです!!

I LOVE EDO 100!と叫びたいくらいに好きなシリーズなのです。

今年は広重イヤーなんですね

「名所江戸百景」はその名の通り江戸のメジャーな名所(時々マイナーなところも)が描かれた浮世絵です。絵師は歌川広重。今回の展示では、ご丁寧にGoogleマップも一緒に展示されており、当時広重がスケッチしただろうと思われる場所もわかるようになっています。こういう方法はとてもいいですね。初めて鑑賞する人にも、江戸と現在の比較が出来ますし。

ちなみに当時の江戸の切絵図(地図)を眺めるのも大好きなのですが、意外と江戸と東京ってそんな変わってないんです。高層ホテルの部屋から都心部を見下ろして江戸時代の地図と照らし合わせるとより楽しめます。当然っちゃ当然なのですが、広大な敷地を誇った大名屋敷はまんま官公庁の敷地や公園になっていることが多いですね。

江戸と現代の地図を重ねて見られる神アプリ「大江戸今昔めぐり」

例えば大好きな江戸の絵師、酒井抱一は姫路城主酒井家出身ながら江戸生まれの江戸育ちで、当時の酒井家の上屋敷は大手門近くというセレブ中のセレブであり・・・って話が逸れました。

 

ここで、EDO 100から私のお気に入りベスト3をご紹介したいと思います。

浅草田甫酉の町詣(前期展示)

人を描かずに人の気配を伝える手法が好きです。これは一見、猫が部屋から酉の市を眺めているようなシーンですが、左下の簪コレクションがここは吉原の遊女の部屋であるということを告げています。手ぬぐいや茶碗などに生活感が出ていて、遊女はこの画面にはいませんが存在を感じさせる、という点でとても好きな1枚。

 

亀戸梅屋鋪(前期展示)

今回のチラシのヴィジュアルにもなっていますし、ゴッホも模写していたことで有名な1枚。何と言っても構図と色。赤に近いピンクがそれだけで非常に美しく、さらにグラデーションを経て地面のグリーンへ繋がる色構成がセンス良すぎて脱帽。この、木をどーんと手前に配置する構図は真似したら先生に怒られそうですけど笑、完璧だと思います。

 

月の岬(後期展示)

 

品川ですね。海を望める妓楼って素敵。私がこれまで観た浮世絵の中でベストワンに君臨する鳥居清長の作品も、品川が舞台。
画面右にはお月見でしょうか、お食事のあと。そして誰かいます。簪が少し見えるので女性でしょう。左側の影は簪の数からして遊女です。ここでも遊女そのものを描かずに影だけの引き算な存在感をして、物語を想像させます。

 

当時は品川駅あたりまで海だったようです

 

品川は吉原より格が落ちるそうですが、やはり海が見えるという点で品川のほうがロマンを感じてしまうのです。東海道を行き交う人々で賑わっていたでしょうから、吉原とはまた違ったドラマがたくさんあったに違いありません。

江戸100の中で、遠景に描かれている代表的な山は富士山と筑波山です。富士山は確実に江戸から見えたでしょうが、筑波山も見えたのでしょうか。関東平野だから見えたのかもしれませんね。

作品によっては版木の木目まで残っているものもあり、当時をリアルに感じました。浮世絵ってどうしても絵師がクローズアップされがちですが、彫師摺師も超絶技巧であってこそ素晴らしい作品が生み出されるんですよね。また、広重のスケッチも見ましたがサラっと描いているようでやっぱり上手い!風景画を苦手とする私には一生かかっても手の届かない域でした。

江戸100を見ると、大江戸ってグレーターロンドンにも負けねぇぜ!って思います。そして、その江戸の市井で起こっているエピソードは落語でお勉強。江戸に脳内トリップすることは、私の大事なリラックス方法でもあるんです。実際に行けたらどんなに楽しいだろう、と思います。

 

太田記念美術館

 

 

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