クルマで巡る美術館第13回は、平塚市美術館で開催中の深堀隆介展です。今回からタイトルを施設名ではなく、展覧会名にしました。何度も訪れる施設もあるので自分でわからなくなりそうで。
私の職場は平塚市にありますが、この公立美術館は今まで訪れたことがありませんでした。今回初めて訪れてみて、予想外にいいところだったことに正直驚きを隠せません。これまで訪れた公立(県立や市立など)美術館の3分の2は、いかにも行政センターっぽい造りで入る前から残念な感じがするのです。平塚はそんなことありませんでした!でも、油断は禁物。面構えだけ期待させて中スカスカの横浜美術館みたいな例もあるし・・・
都内を除くと、川越市立美術館、宇都宮美術館あたりはとても洗練されていましたね。
平塚駅からは少し離れています。歩けない距離じゃないけどバスのほうが楽かもしれません。周囲にタイムズ駐車場が何か所があるようですが私は美術館裏の駐車場へ。館内の受付でチケットを買う時に駐車券を出せば1時間無料にはなります(1時間は短すぎると思うけど)。
中は開放的な空間になっており、市立美術館としてはまずまずのレベル。平塚、見直したよ。
さて今回の目的は、金魚の作品で有名な深堀隆介さんの個展です。偶然にも私は今、金魚熱に浮かされていて・・・そもそも映画「蜜のあはれ」を観た後から、愛車ルーテシアが金魚っぽいということに気づき、ちょうど江戸時代の遊女部屋などにありそうな金魚鉢で金魚を飼いたいと思い始めていたところでした。
まずはライブペインティングでの作品がどーんと。
展示室では、「金魚酒」に代表される、樹脂を流し込んで描いて行く作品、アクリル絵具と墨で描かれた絵画作品などをじっくり鑑賞。私は樹脂作品より絵画作品のほうに心を奪われました。特に屏風は持って帰りたいほど気に入って。
それからスケッチなどの展示も非常に良かったです。美術を学び始めてから、本作品はもちろん、その前段階であるスケッチや草稿、下図やデッサンなどはものすごく勉強になることがわかり。まぁ自分もやらなきゃいけないことなので当たり前なのですが。中でも墨で描かれた黒い金魚たちは美しかった。
最後は圧巻のインスタレーション。
金魚屋「しんちう屋」の平成版がここに。
お気に入りはこちら。
これらの作品に私が惹かれるのはただ単に「リアル」だからではなく、アクリルの中で美しい姿を留めている金魚たちの姿を見るに、生命の儚さを感じて切なくなるからです。あるいは、時空が止まっているような錯覚。2.5Dの小さな世界を眺めているうちに、自分もこの中に入ってしまいたい、という気持ちになる不思議な作品群です。
夏休みなので多くの子供たちも「すごーい」「かわいい」と歓声をあげて楽しんでいました。深堀さんの言葉やブログを拝見すると、とても正直な人柄が伝わってきます。そして、金魚の魅力を教えて頂いたような気になりました。
作品も、日本画でも洋画でもなく、言うなれば「金魚画」。芸術においてカテゴリ分けは大して重要な問題ではないように思いました。私もよく知人から「日本画とは何ぞや」とか聞かれますけど正直わかりません。日本画を学んでいるくせに何たる体たらくと思いますが。だから、「日本画と聞いてあなたが思い浮かべる絵が日本画なのです」としか言えない・・・
今回の展示では墨で描かれたもの、アクリル絵具の鮮やかな色で描かれたものなど雰囲気の違う作品も楽しめました。私もおうちで金魚を描いてみよう、と思ったのでした。
グッズ販売は土日のみというのが唯一残念!
併設のカフェが洒落ていました。水があるせいかこの季節は爽やかです。特製ミートソースもちとお高いですが(1600円くらいだったかな)、お味はよろしかったですよ。でも展示を観てカフェでくつろぐと余裕で1時間超えるから、やはり駐車サービスは2時間は欲しいところ。
それにしても、平日の美術館って最高だなぁ