BLOG 面倒を愉しむ

この引きこもり期間、会社から解放されているおかげで私はいつになく制作に集中しているが、時々「日本画って本当にいちいち面倒なのだなあ」と苦笑いしている。まず、お湯を沸かすことから1日がスタートする。沸かしたお湯を入れた保温ポットと、水を入れたペットボトルを部屋へ運ぶ。これが朝イチのタスク。お茶を飲むためではない。
水彩のように、絵具と筆と水さえあればすぐに描き出すことは出来ない。その上、何か塗ったり貼ったりしたら最低でも一晩以上は放置する。ゆるーい時間に抵抗ない人は日本画に向いているのではないか。

日本画を描いてみよう!と思ったら用意するもの一覧。

お世話になってる喜屋さんのカタログより抜粋

この道具の多さよ!!
入学時に揃える道具一覧を見て「なんのこっちゃ???わけわかんない」と面食らったのを今でも昨日のことのように覚えている。しかも、上記の道具は基本的なもので、どんどん増えて行く。絵皿も絵具も増える一方。おまけに違うものを試してみたくなる欲も出てくるので、道具は増え続ける。ちなみに水墨画をやりたい人は下の青い部分の一覧になるが、随分とシンプルだ。

最初は道具を扱う方法の習得に懸命になり、絵のほうは後回しになったりもしていた。「これ、どうやって使うの?」というモノが多過ぎた。まあ今も試行錯誤し続けてはいるのだけど。

不思議なことに、だんだん慣れてくると、この道具たちにも愛着が湧いてきて、「いちいち面倒」が精神的安定をもたらす。思えば、今のように水道、エアコンやドライヤー、電気ポットやコンロがなかった時代には、もっともっと面倒だったはずだ。だから、この「いちいち面倒」な時間を楽しむことが出来るようになると、日本画が楽しくなってくる。冬は火鉢で温めていたのね。。。と、先人たちの様子を想像すると、自分もその末端の最底辺にいるかと思うと嬉しくなってきたりもする。

ところで、皆さんは「日本画」というと、何を思い浮かべるだろうか。
日本画とは、明治になってから西洋画に対して生まれた言葉だ。何を以て日本画とするかという定義はない。私はなんとなーく、「支持体が日本の紙や絹で、画材も岩絵具&膠など日本古来のもので描かれた作品」というざっくりした印象を持っているが・・・未だによくわからない。ちなみに現在、私が国内でもっとも好きな日本画の作家さんである、木村了子さんと阿部清子さん。

木村了子さん。絹本に描かれたイケメン仏画。裏箔(絹の裏側に箔を貼ること)が施されており、滲み出るような光が美しい。伝統技法で現代的な若い男性を描く。

 

阿部清子さん。ほとんど水墨画と言ってもいいくらい、墨と岩絵具というシンプルな表現であるにも関わらず、いつも彼女の作品の前に立つとハートを射抜かれる。ホント大好き。

このように、お二方とも日本画という領域であることは共通だが、まったく違う表現。モティーフは現代的であったりもするが、画材はこの国が何百年と繋いできたもので、やっぱり日本画と呼べるだろう。

そこで、日本画のとっかかりとして、読みやすくて楽しい本を2冊レコメンド。

左側は、堀口茉純著『UKIYOE 17』、右側は山口晃著『ヘンな日本美術史』

UKIYOEのほうは江戸の浮世絵師たちを、日本美術史のほうは有名な日本の絵と作者を、ユーモアと読みやすい文体で解説。両方に共通するのは、「変態の紹介本」みたいになっていること。そこが推薦ポイント。日本美術界のヘンタイ列伝みたいになっていて、とにかく楽しく読める。しかし読み終わる頃にはちゃんと知識も身についているという素敵な本。引きこもりのお供におすすめ。

♪今日のBGM  BOØWY『わがままジュリエット』