理論派のアナタにおすすめ、美術鑑賞本

本格的に暑くなると、凍らせたヨーグルトと三味線の音色が私の必須アイテムになる。つまり、凍らせたヨーグルトをシャリシャリしながら三味線を見たり聞いたりするのが「わたくし流夏っぽい過ごし方」だと自負している。

ところで私には理論の世界を生業としている友人が多い。理論のリの字もない私はよく助けられている。

過去を鑑みれば、かのミケランジェロだって建築彫刻絵画と何でも出来たしね。あの時代は彼らは芸術家でなく技術者兼職人だった。ダ・ヴィンチの素描などほとんど設計図のようなものだ。

ここに紹介する本は、どちらかと言うと理系脳の人にお薦めしたい。

私のように直感的に見るタイプにはあまり向かないが、それでも「絵の読み方」としては非常に参考になる。直感も突き詰めて行けば、こうして理論的に解説されると「そういうことだったのか」と理解出来る。

巨匠が描いたいわゆる「名画」の何が名画たるかが述べられており、主役の見分け方、視線の誘導や構図から来る印象の違い、バランス、色のストーリー、四角い画面の効果など、豊富なカラー図満載でわかりやすい。絵自体の題材、物語などは潔く省略されている。理屈っぽく分析することが好きな人には面白いであろう。

さらに、美術館へ行って作品を見ても「よくわからないから・・・」と敬遠しがちな人にもオススメしたい本でもある。こういう見方もあるんだと思えばネタに困らないはずだ。

私自身は苦手なのであまりやって来なかったが、作品は鑑賞するものだけでなく、分析しても楽しいものらしい。確かに考えてみれば音楽にも音楽理論という学問があるし、普段は忘れがちだけど芸術と理論は切り離せないものだ。得手不得手はあるにせよ。

先日、世界の美術関係者が選ぶ史上最高の名画は何か、という記事を読んだ。回答が美術関係者なので、客観的な視点を持つプロである。彼らが選ぶ史上最高の名画とは、もちろんモナ・リザではなかった。

その結果、現時点で史上最高の名画に選ばれたのがこちらの作品である。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

ベラスケス(1599ー1660)は言わずと知れたスペイン、ハプスブルク家お抱えのカリスマ宮廷画家で(向かって左端の髭面のイケおじ)、この作品は色々と詰め込まれているので見ていて飽きないのではあるが、これがなぜ史上最高の名画なのかという理由において、この構図はまず間違いなく一役買っている。

(私はベラスケスの作品と言うより、彼本人のルックスがどストライク過ぎて好きなのである・・・まさに理想のラテン男)

対角線が交差する点に描かれているのは鏡で、この中には国王夫妻が映り込んでいる。実際の彼らはどこにいるかと言うと、この絵を見ている私たちと同じ位置にいるのだ。だから、ベラスケス本人などは私たちのほうを見て微笑んでいる。凝った構図だなあと漠然と感じていたが、こうやって実際に線を引いて詳細に解説されると深く納得する。

この本を読んだ功罪もあった。
デッサンの授業で5つのモチーフを構成して描く際、あまりにも色々考えてしまってなかなか構図が決まらず、迷いが生じて描き出しがかなり遅れてしまった。生意気にも「視線誘導ライン」とか「隣どうしの色の配置」とか考え込んでしまったのだ。デッサンなのだからもっと気楽に自然にやれば良かったのだが・・・「そんなことを考えるほどお前は描けるのか!?まずは何も考えず目の前のものをそのまま描け!!」という巨匠の声が聞こえた笑。

絵を学び始めて、これまでの鑑賞方法は確かに変化した。これまではあまり考えなかった「どうやって描いたのだろう」という点に着目するようになった。技法だけでなく、なぜこの色を使ったのかとか、なぜこの人はこっちを向いているのかとか、この構図は何を意図しているのだろうとか。絵の中に描かれた世界に重きを置いていた以前の鑑賞法から、出来るだけ描いた人側に近づきたいと思うようになった。

この本は、「そうは言っても理論的に絵を見るのは苦手」と感じる私のような者にとっても良く出来た指南書である。

でも結局は「好きかそうじゃないか」に二分されるんだけどね。好きではない作品でも、この本のように分析して観察すると今まで見えて来なかった絵の意図が見えてくるのかもしれない。その結果、その絵が好きになる・・・ことはあまりないかな。

 

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