深夜の女ふたり道

女ふたり、クルマに乗ってハイウェイをひた走っていると言えば映画「テルマ&ルイーズ」が思い浮かびます。あの映画の強烈な印象のせいか、私にとって「女ふたりドライブ」のイメージは、決してスウィートではありません。むしろ殺伐としています。

翻って私たち。お互いもう小娘じゃないので、背負っているものもたくさんあれば、溜まっている怒りやどうしようもなさというネガティブな感情も抱えています。そういうのを全部背後に置き去りにして、ひた走る。そんな夜がたまにはあっても、いい。可愛らしいクルマでのんびり走りながらキャッキャと恋バナするような年代はとっくのとうに過ぎ去った。私たちには「どうやって始めるか」ではなく、「どうやって終わらせるか」のほうが大事なのだもの。甘いお菓子はなくていい。

そんな私たちに似合うのは灯の少ない工業地帯。
ヘッドライトに浮かび上がる白線と、火の玉みたいに浮遊する前方車の赤いテールランプ。今の私たちの心情にぴったり合っている。ステアリングを握る彼女の手は流麗に動くけれど力強い。だから私は安心してシートに体を預けられる。空も海も私たちも暗い。でも、素晴らしい時間。

 

装飾を捨てて

というわけで、普段は自分が運転することがほぼ100%な私ですが、珍しく友達の助手席にお邪魔。乗りたくて手に入れたクルマ。それがどんなに大切なものか私も知っています。ドアを開けて入れてもらい、彼女の気遣いに感動。

普段はお互いに忙しく、なかなかこういった時間を共有する機会がないのですが、どこかへ移動する目的ではなく、走ること自体が目的のドライブを女同士で遂行するというのは気持ちいいこと。目指す先にはおしゃれなカフェや可愛いレストランも、気持ちが華やぐような仕掛けもありません。不機嫌な顔をした私たちを乗せたクルマが一台。あるのはそれだけ。流れて行った白線の数だけ、無駄な感情を捨てて行ける。そんなドライブです。異性と2人だけでは決して味わえない世界。

私は将来、2シーターオープンに乗りたいと考えていますが、女同士でオープンで走るのもさらに乾いていて楽しそうだと想像しました。女ふたりで走る時は、あらゆる装飾を捨てられる時でもあります。素の状態でいられる。私たちの素はニコニコ笑顔ではなくて、やっぱり不機嫌。だから居心地がいい。

そんな初夏の週末深夜。また明日から頑張れそう。