クルマで巡らない四万温泉

珍しく温泉などに浸かりたいなどと思い立った。
いくつか候補を考えた結果、群馬県は四万温泉へ。初群馬。クルマ仲間のおかげさまで栃木あたりはだいぶ親近感を持つようになったのだけど、群馬は未知だ。

スタッドレスを持たない生活の私は、当然電車で行くしかない。

四万温泉とは、だいたいこのあたり。

 

その前にまずは上野だ。上野駅のこのエリアに来たのは初めて。
「上野発」は、この字面だけでもロマンがあるではないか。

よく見たら上に電車が!!何これパリっぽい

旅愁をそそる駅であることを再認識する。だいたい「道行」な男女が向かうのは上野発で北へ、と昔から決まっている。清張の失踪ものなんかもそんなシーンが多くて好き。

ここから「特急草津」という温泉感満載な特急に乗車。
特急と言うと速いイメージを持っていたが、実際はそうでもなく・・・でも、のんびり旅をするのには確かにいいだろう。車両は初めて乗るもの。もし「踊り子号」と同じ車両だったらガッカリだった。

上野から2時間ちょい、「中之条」という駅に放り出される。
恐ろしいほど何もない駅で、特急から降ろされて温泉へ向かう客は右往左往。そのうちバスが来たが、満員で座れず。この状態で40分も揺られるのはきついので、たった1台止まっていたタクシーに乗り込んだ。

ここらへんも最近の夏は酷暑らしい。これまでエアコンなど必要なかったのに、ついにうちも買いました、と運転手さん。

山に近づくにつれ、雪が現れてくる。すでに夏タイヤのクルマが路肩で往生している。どうして夏タイヤでこの地へ来ようと思ったのだろう。私ですらそんな愚行はしなかったと言うのに。

ここは四万温泉のほんの入り口。今回の宿はさらにここからクルマで15分ほどの山のなか。この小道の先に、千と千尋で有名な旅館がある。赤い橋の。ちらっと見えたがとても良い雰囲気。渡り廊下がいい。回廊とか渡り廊下の好きな私には、もうこれだけで期待値が上がるというものだ。

 

四万温泉の一番奥に、今回お世話になる「つるや」さんがあった。
「鹿のぞきの湯」というお風呂があるらしい。

中へ一歩入ると、懐かしいストーブの匂いに満たされていて心が緩む。スタッフは若くて感じのいい子ばかり。

私が追求する「大正浪漫風」だとか「登録文化財」クラスではないものの、きちんとした真面目な旅館という印象。清潔で、静かで、気持ちはいい。共有スペースにはストーブが必ず置いてあり、いつも暖かい空気を生みだしていた。

 

ところで、私は「旅館の和室は布団一択」だ。
最近多い和洋室だとか、「和室にベッド」は美的感覚から到底受け入れられない。この旅館も、「ちゃんと和室に布団」であることにこだわって探し出した。

和洋室というわけのわからないスタイルの宿が何と多いことか。ベッドで寝るなら最初からホテルへ行く。なぜ旅館へ出向くのか。それは、畳の上で布団で寝たいからだ。しかし、世の中の和洋室の多さを見ると、私のようなものは少数派なのだろう。

そしてさらに贅沢を言うならば、ピリっとした純和室よりも、昭和初期の遊郭みたいな崩れた和室がいい。

旅館メシ、もとい、ご馳走。
これはスターター。ほどよいタイミングでお料理が運ばれてくる。まあ、食べられないものも多くあったけどそこは雰囲気で。りんごジュースは中之条産であるらしい。
普段はすき焼きなど食べないのだが、せっかくだからと頂くと、美味しかった。

 

お待ちかねのお風呂。
温泉100%。露天ではないけれど窓から雪見が出来た。
やはり木のお風呂はいい。熱いお風呂が苦手だからそう長くは入っていられないのだけど、もう身体中の細胞が「いい!」と言っている。猫脚のバスタブも好きだけど、こういうお風呂ももちろん好きなのだ。

翌朝は日本画の世界がそこに。

数多の絵師が雪を描いてきた理由がわかる気がした。
久しぶりに見たモノトーンの世界にしばし声を失い、応挙や雪舟の作品が次々に浮かんだ。雪化粧とはよく言ったものだ。でも私は雪を描かないだろう。
舞い散る軽い雪は桜にも似ている。私はどちらにも惹かれない。ただ傍観者としてなら雪のほうを好む。汚いものを覆い隠してくれるから。

宿を後にし、バスターミナルへ向かう途中、黒い某Bが路肩にとまっていた。運転手であると思われる男性が必死な様子でタイヤ回りの雪を掻き出しており、その横で不機嫌そうな女性が立ち尽くしていた。その様子を「気の毒に」ではなく「ざまぁ」と思った私の人間性の低さよ。

ひなびた温泉街に惹かれる今、行ってみたい温泉街はたくさんある。
華がなくても厚みがあればいい、と感じ始めたのは、私がいよいよ年を取ったからなのか。

とは言え、今週末は初深夜バス体験が待っている!!(※深夜バスだと路線バスの深夜便になっちゃいますね。夜行バスです。どうも旅=深夜特急のイメージが刷り込まれているせいか、深夜って言葉にときめいてしまうのです)

「クルマで巡らない四万温泉」に2件のコメントがあります
  1. 先日、日光に雪を見に行ったときのこと。富士山ナンバーのプリウスが夏タイヤで低速走行してました。富士山地方でも雪降るんじゃないの?と不思議でした。

    上野駅ってちょっと変わった作りなように感じます。でもパンダ押しだなぁっていうところに気をとられてあまり観察してなかったです。

    とても良さそうな旅館です。和室は良いですね。他所では今は和洋室というのがあるんですね。もしかして外国人向けだったり。こちらはカウントダウンライブ終了後新宿のホテルに泊まりましたが明らかに掃除してないイケてないホテルでした。直前でも予約がとれるようなホテルはろくなもんじゃない、とよく分かりました。

    1. 日光・・・今の時期は美しいに違いないですね!紅葉とはまた違って水墨画的な美しさがあると想像します。
      きっとその富士山ナンバーは南国に普段住んでるのかもしれませんよ?けっこう危機感ない人がいるのだなあと思いました。
      多分和洋室は外国人向けであったり、あとは日本人でもやはりそのほうが快適って声が多いのではと予想します。
      新宿、予約取れただけでもラッキーですよ!上野は本当に独特です。嫌いじゃありません。確かにパンダ押しですね笑。

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