「クルマで巡らない美術館」、第2回は、Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区)。
優秀な文化施設
Bunkamuraには10代の頃からお世話になっています。ル・シネマではヨーロッパ映画をたくさん上映していますし、オーチャードホールもコンサートやバレエ鑑賞などでよく来ています。シアター・コクーンだけは未だ無縁なのが残念。地下にカフェ・ドゥ・マゴも健在。併設のアート専門書店も寄り道スポットです。
1階のギャラリーでも小規模ですが時々マニアックな展示をやっていますし、東急に用はなくてもBunkamuraは何かと用事がある場所。ただ、渋谷の雑踏を抜けるのだけが毎回とても嫌。そして、人もクルマもごった返しているこの界隈に、愛車で突っ込む勇気はまだありません・・・。
近くには、飲めない私が唯一ワガママの言えるワインバー&フレンチレストラン「シノワ」があります。カフェ系だとすぐ横にVIRONもありますね。
現在、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)展「これぞ暁斎!」を開催中(16日まで)。
がっかりの理由
作品云々の前に、今回私は声を大にして言いたいことがあります。
前半に展示してあった一幅の掛け軸。作品のど真ん中に薄墨の線が描かれています。上から下まで、まっすぐな線が。
「どうしてこんなところに線を描いたのだろう、モチーフに関係あるのかな」とよく見ると・・・ガラスの継ぎ目の影であることがわかりました。エエェ〜、これ、美術館としてあってはならないでしょう。
私のテンションは下がりまくり、展示の仕方のあまりのレベルの低さにがっかりしました。墨の濃淡で描かれた作品に、人為的に影を作ってどうするんでしょう。こんなの初めて見ました。前回訪れた時に開催されていた「国芳・国貞展」は非常に展示方法が良かっただけに、どうしたBunkamura!という感じでした。展示場所を移すとか、照明の方向を工夫するとか、対処方法はいくらでもあると思うんですけどね。学芸員の方が気づかないわけないと思うのですが・・・。
都内でも公立の美術館はそもそもがヒドイ空間が多くて諦めもつくのですが、民間ならばもう少し鑑賞者のことを考えて欲しいと思います。それに、何より作品に対して失礼だと思うのです。
このことで展示空間全体を見直してみましたが、ちょっと作品を詰め込みすぎのような気もして、あまり上手な魅せ方ではなかった点が残念です。
カラスより、カワイイ春画
さて、暁斎は私が好きな江戸より少し新しく、明治に入ってからの作品がほとんどです。浮世絵、版画あり、掛け軸あり、春画あり、仏画あり、とバラエティに富んでいます。
今回の出品元であるゴールドマン・コレクションの傾向のせいなんでしょうか、カラスや動物をモチーフとした絵が多いです。ポスターから想像するような「お化け!女!」みたいな勢いのある作品を期待していた私には全体的に可愛すぎてちょっと物足りない感じでした。どちらかと言うと「可愛いほっこり系」のモチーフが多いので、どちらかと言うと可愛い好きな女子にお薦めですね。百鬼夜行屏風なんかも、ユーモアいっぱいで可愛いです。伊藤若冲は鶏に固執していましたが、暁斎はカラスだったようですね。墨で描かれたカラスは迫力がありますが、私は正直途中で飽きました。
終わってみれば印象に残っているのは、みんな大好き!春画だけ、という。暁斎の春画はほのぼのしていて、すごく楽しいんです。生々しくないので付き合い始めの若いカップルでも安心して見られます(注:別コーナーになっているので未成年は気をつけましょう)。エロスではなく、ほとんどコメディ。バカバカしくて思わず笑ってしまう作品もあり、暁斎自身のセンスがウィットに富んだものだったのだろう、と感じました。残っている暁斎自身の写真を見ても、なんか面白そうなおっちゃんだなぁ、という印象。鹿鳴館や三菱一号館を設計した英国人ジョサイア・コンドルさんが弟子入りしたことでも知られています。
暁斎はフランスの新聞ル・フィガロで訃報が掲載された初の日本人だそうですね。初めて知りました。
前半で展示方法に衝撃を受けたせいもあり、何を得たのか得なかったのかよくわからないまま会場を後にします。ミュージアムショップも今回は取り立てて欲しいグッズもなく。そのままドゥ・マゴで一息入れ、何となく消化不良なので書店で浮世絵関連の書を1冊買い、帰途につきました。次回のソール・ライター写真展に期待したいと思います。
Bunkamura ザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/index.html