クルマで巡らない美術館第4回は、art space AM(東京都渋谷区)です。
必ず戸惑うエントランス
最寄駅は明治神宮前。交差点からやや渋谷寄りにあるビルケンシュトックの前を進み、1本目を右折します。道なりに少し歩くと坂になりますので、その坂の始まりぐらいにある、一見普通のマンション。「こんなところにギャラリーが!?」と思ってしまいますが、あるんです。周りには開放感のあるカフェが数軒ありますが、今回は週末だったせいか、いつも立ち寄るエコファームカフェ632もテラス席にはベビーカーが駐車してあり、満席のようでした。
入口も普通のマンションなので、ちょっと入りにくいですね。私も最初に来た時は「本当にココ?」と怪しみました。でも大丈夫です。入って右奥のエレベーターで3階に上がり、降りて右側です。エレベーターもぐぉーんと動く古さがまたいい味を出しています。
すべてがちょうどいい空間
ここはポラロイドカメラで有名なIMPOSSIBLE TOKYOさんのアートスペースです。今回はアラーキーこと荒木経惟氏の作品展「淫春」を観にやって来ました。
「淫」シリーズは各季節があり、大判の作品やポラ作品など様々です。今回は春らしく、フルカラーの大判の作品にアラーキーの書道入り(写狂老人A)で、眺めても読んでも楽しめる作品群。ポラ作品も少しありました。まずは雰囲気を。
多い時でも2、3人の鑑賞者なので、自分のペースでゆっくりと堪能出来ます。写真撮影は可能。私はいつもまず一周して、次に椅子に座りぼーっと眺め、もっとも気に入った作品の前でまたぼーっと眺め、最後に写真を撮らせて頂いて帰る、というパターンです。
大判の作品だとちょうどよい距離感ですが、近づいて見たい時は花道のような台を降りてコンクリート剥き出しの床を歩きます。作品と対話が出来る感じは、ここならでは!
大好きアラーキー
アラーキーの作品は90年代から鑑賞するようになりました。最愛の奥様、陽子さんの死を撮った「センチメンタルな旅・冬の旅」が、私にとって初めて買ったアラーキーの写真集です。また、彼のお弟子さんでもあった野村佐紀子さんの個展もこのギャラリーで時々開催されるので、年に何回かはここへ足を運びます。
エロとユーモアと芸術。死と悦びとエネルギー。彼の作品を観た後は、なんか無性に股を開きたくなるから不思議です。飾らない素の自分を曝け出したい気持ちになるんですよね。私は生きている、という実感が欲しくなると言うか。
例えば普通のどこにでもいそうなおばさんがホテルの一室で脱いで、アラーキーに幸せそうな顔を向けている。別に美人でもスタイルが良いわけでもないのに、むしろ美しいとは思えないはずなのに、見ているこちらも幸せな気持ちになってくる。それがすごいと思います。写真の力です。
色鮮やかなお花がモチーフになっていますが、どれもエロく見えてくるから不思議。この花のエロさをいつか日本画で描いてみたい。清楚で美しい花ではなく、エロくて豊満な花。もうぱっくり開き切った花たち。いいですねぇ。長い間、魅入ってしまいます。アラーキーが撮ると途端にエロい物体になるのは毎回感心。それも、西洋的なものではなく、日本的なエロさ。明るいのにじっとりして、あっけらかんとしているのに、秘めている。自分も画面に溶け込みたくなります。
最近ポラロイドカメラを購入したので、今後もこちらには足繁く通いたいと思います。エントランスは1階ではなく2階なので、帰りのエレベーターのボタンを押す時は注意。外に出るとちょっと日光が眩しく感じられますね。来るときは絶対に1人で来たい、お気に入りのスペースです。
art space AM