クルマで巡らないラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン
クルマで巡らない美術館第5回はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンです。
正確には美術館ではなく、毎年5月の連休に有楽町エリアで開催される音楽のお祭り。もともとはフランスのナント発祥で、ラ・フォル・ジュルネとは「熱狂の日」と訳されます。
有楽町の東京国際フォーラムがメイン会場。
とにかく気軽に行けるクラシックコンサート
毎年5月の連休に開催されており、今年のテーマは「ラ・ダンス」。毎年テーマが設定され、そのテーマに基づいてのプログラムやイベントが組まれています。
コンサートひとつの枠が通常のコンサートと比較して45分と短く、また価格設定も低料金なので、普段クラシックのコンサートに行かない方々も気軽に参加しやすいのが特徴。一番安い席で¥1,500です。赤ちゃんOKのコンサートもあります。1日パスポート券もあり、朝から晩まで聞きたいコンサートがある方にはいいですね。そして、国内外の一流ミュージシャンが出演しています。
会場はあちこちに分かれており、普段はカンファレンス会場なんかに使用されているような部屋もコンサート仕様に。

私の場合は、今年は「ラ・ヴァルス」と「ボレロ」目当てに参加してきました。どちらも大好きなフランス人作曲家、モーリス・ラヴェルの作品です。私にとってバレエ音楽と言えばラヴェル、そしてストラヴィンスキーなのです。
会場の雰囲気は毎年とてもいいですね。


昼間っから超絶技巧に酔いしれる
1本目は午後一番の枠でした。

演奏はロシアのピアニスト、ボリス・ベレゾフスキー。
この方の演奏は皆さんも耳にしたことがあるはず。というのも、浅田真央ちゃんのソチフリー、「ピアノ協奏曲第2番」のオリジナル音源はこの人の演奏です。他の演奏家に比べてアップテンポ。はっきり言いまして、私、以前からベレちゃんのファンです。特に彼のラフマニノフは大好物。

本日のお目当てはラヴェルの「ラ・ヴァルス」。オケ版もいいのですが、ピアノ版のほうがより狂気を感じるので大好きなんです。日本語に訳すと「ザ・ワルツ」というタイトルになりますが、この曲のすごいところはただの舞踏曲じゃないところ。私の解釈では・・・
上品な紳士淑女たちが優雅に踊っている→だんだんハイになり乱行パーティへ様変わり→アタマのネジが吹っ飛び薬物をあおりながら裸でやりまくり踊り狂う→快楽と断末魔の雄叫びを上げながら全員事切れる
という情景。
最初は上品なワルツに聞こえるのですが、途中から不穏な音が入り始めて、最後は発狂してバッタリ死んでしまうような音。癖になりますねぇ。ラヴェルは変態。そこがいいんです。
ベレゾフスキーの演奏も飛ばしまくっていました。安心の超絶技巧。ロシアのピアニストは安心感が違います。
次のコンサートは21時45分という一番遅い枠でしたので、銀座などにぶらぶらお出かけしたり、カフェで一休みしたり、都心の1日をのんびり過ごせました。
今年はダンスがテーマなので、各ホールもダンサーの名前がついています。
私がもっとも好きな振付家モーリス・ベジャールもここに。こちらのホールには特設ステージが設けられており、
徳島の阿波踊りを観覧しました。若い女の子たちの美しい太ももにおじさんたちは食いついていましたが笑、近くで見るとハードなダンスなんですね。
ラヴェルの変態加減にニヤニヤ
最後はホールA、5000人収容の大ホールです。
音楽ホールとしてはどうなのか、と毎回思うのですが、慣れとは恐ろしいものですね。すっかり違和感がなくなってきました。
1曲目はストラヴィンスキーの「火の鳥」。オケのコンサートは久々だったので、その壮大な音に酔いしれました。やっぱり生の音は違います。ヨーロッパのオケは音が豊かですね。アメリカのオケはデジタル的、日本のオケは教科書通り、という印象があります。
お楽しみのボレロは、生で聴くとまたいっそうスゴい曲だということがよくわかります。やっぱりラヴェルは変態だな、とニヤニヤしてしまう、そんな曲。何度聴いても飽きません。私の中ではバレエの傑作ももちろんボレロです。
今回はジャズピアニストの小曽根真さんと、トランペッターのエリック宮城さん、フランス国立ロワール管弦楽団のコラボです。小曽根さんは以前、NYフィルとの共演を聴いたことがあります。彼のピアノが鳴り出すと、ホールがジャズクラブに。
ボレロも彼のピアノの音が入り始めると、なんかものすごく「おしゃれボレロ」に様変わり。裏で鳴る違わぬリズムと、彼の自在な浮遊感がミックスされ、これは滅多に聴けないボレロだぞ、と感じました。クライマックスでは大歓声。アンコールでは手拍子までしちゃいました。これがラ・フォル・ジュルネのいいところ。お祭りなので堅苦しくないんです。
時間があれば3日間様々なコンサートをはしごしたいところなのですが、なかなかそうも行かず。ただ、このイベントは本当に誰でも気軽に参加出来る雰囲気があるので、普段クラシックのコンサートに行かない人も楽しめるところが素晴らしいと思います。さらに、マスタークラスなどもありますし、オリジナルグッズや楽器のプロモーションもあちこちで開催されており、ぶらぶらするだけでも楽しめます。
都心の味気ない空間に音楽が流れ出すのって、なかなかいいですよ。
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン