クルマで巡らない山種美術館

クルマで巡らない美術館第11回は山種美術館(東京都渋谷区)です。

 

 

上り坂ですが・・・

やばい。気がつけば、もう会期が終わりそうな展覧会がいくつも・・・!かなり焦りつつ、まずは行ける範囲で山種美術館から。

JR恵比寿駅から徒歩約15分です。北方向へ歩いて行きます。恵比寿ガーデンプレイスとは逆方向ですね。行きは上りです。途中、美味しそうなお店がいくつかあり、誘惑に負けそうになることも。外国人が並んでいるラーメン屋さんもありました。そんなところを通り過ぎ、息が切れてくる頃、白い建物が見えてきます。「山種美術館前」という交差点のすぐ右側。エントランスの扉が黒くて中が見えないので、入りにくさこの上ない。

 

上り切っても達成感のない坂ですが・・・

 

入りにくいエントランスもちょっと苦手

 

周辺道路に路駐しているクルマはメルセデスやらBMWやらポルシェやらがやたら多いんですけど、取り締まりしていないんですかね。ルノー車は一台も見かけず。まあ今日に限らず、いつも見かけないんですけど。やはりドイツ車の圧倒的シェアを感じます。

さて、ここは日本画専門の美術館ですが、個人的にはあまりいい印象がない美術館でもあります。しかし今回は上村松園の美人画がたくさん出るので、表装や絹本着彩の参考に、と出かけてきました。上村松園って、どんな絵なの?と思ったそこのあなたは、こちらへ。

 

ちょっと苦手な美術館

入場料は学割で800円。受付奥のカフェでは展覧会にちなんだ見目麗しい和菓子が頂けます(食べたことはありません)。ですが、なぜかいつも入る気にならないカフェなんです。
展示室は地下にありますので、エレベーターか階段で降ります。

上村松園と言えば、宮尾登美子の小説「序の舞」。作品名でもあり、名取裕子さん主演で映画化もされました。
あの時代に「女である」というだけで画学校では白い目で見られ、師匠から関係を迫られ、挙句の果てに私生児を産み・・・とにかく強い人です。

自らタフな人生を選んで生きた松園ですが、彼女の描く女性画は「綺麗」。この表現が一番しっくりきます。「きれい」とか「キレイ」ではなく、漢字で「綺麗」。
特に、生え際ね。単眼鏡でじっくり観察してしまいました。ぼかし具合が絶妙。全体的に、寒色系の着物に、紅をさした口元。ほんのり赤く染まった指先や耳たぶ。昔の日本女性の美しいところだけを余すところなく描き込んだ、という感じ。それが松園自身のタフな人生とコントラストを生んでいるように思います。彼女の美人画は「なよっ」としてないんですよね。どの女性も凛とした美しさで、媚びも持っていません。京風の美、とでも言いましょうか。そして私は、実は彼女の画風はそれほど惹かれません。素敵だな、美しいな、とは思うのですが、私の心を捉えて離さない「何か」がないのです。彼女の人生には大いに感情を揺さぶられるのですが、作品はまた違うんです。単純に好みの問題です。表装も凝っていましたね。派手ではないのですが、とても上品で洗練されたデザインでした。

 

松園より球子だった私

終盤、大好きな片岡球子画伯の作品がどどん!と登場し、前半で鑑賞した松園がぶっ飛びました。
北斎の娘お栄を描いた作品ですが、ヴィヴィッドな色使い、強烈な表情、一度見たらしばらく目が離せない引力の強さ。やっぱりこっちのほうが好き!その場がぱっと華やぐというか、「何かすごい・・・」という圧倒的なエネルギーを感じるのです。球子画伯の絵はどんな絵か興味のある方はこちらへ。

人物画だけでなく、彼女の描いた風景画は例外的にとっても好きなんです。お亡くなりになる前には辻堂に住んでいらっしゃったので親近感も勝手にあるのですが、彼女のエネルギッシュな作品を前にするたびに「絵が上手いって、一体どういうことをさして言うのだろう?」と考えずにはいられないのです。

他に月岡芳年の美人浮世絵なんかもありました。肉筆では鏑木清方なども。でも、やっぱり球子画伯ですよ私には。

ミュージアムショップは充実度に乏しく、毎回一応のぞきはしますが特に欲しいものはありませんでした。時々、ツボを得た展示をやるのでいつも情報だけはチェックはしているのですが、やっぱりあまり印象が良くない美術館です・・・何だろう、私には合わないだけなんだと思いますが。

と言うわけで、恵比寿駅の向こう側にある都写真美術館で開催中のアラーキーへ向かうことにしたのでした。

 

山種美術館