クルマで巡らない国立劇場

クルマで巡らない美術館第10回目は、国立劇場(東京都千代田区)です。
美術館ではありませんが、古典芸能を上演しているので紛れもなく芸術を楽しむ場所!

 

 

年齢層高い・・・

今回は小劇場のほうで文楽(人形浄瑠璃)を鑑賞してきました。

最寄り駅は半蔵門駅ですが、怠け者の私は新橋駅からタクシーに乗ってしまいました。870円ほどで着。こちらに来るのは2度目で、前回はかなり昔にやっぱり文楽を観に来ました。

開場時間前に着きましたが、エントランスにはかなりの人がすでに集まっています。

年齢層は高めです

 

文楽って結構人気あるんだなぁ、と思ったのですが、この日は初日でした(会場に行って気づいた私)。ご贔屓さんとかもいらっしゃってたのかもしれませんね。見渡した感じほとんどが50代以上でしょうか。やっぱり古典芸能はそうなっちゃうんだろうなぁ。

 

のちに「満員御礼」の札も出ていました

 

リアル玉藻前が観たかった!

さて、なぜ突然文楽鑑賞にやって来たかと言いますと、私の好きな絵のモチーフのひとつ「玉藻前(たまものまえ)」が上演されるからです。

 

私が今一番好きな画家、橘小夢の作品より

 

このお話が東京で観られるというので、売り切れ寸前のチケットを滑り込みでゲット。

演目の正しいタイトルは「玉藻前曦袂」(たまものまえあさひのたもと)と言います。4時間半に及ぶ公演なのですが、メインストーリーを簡単にご紹介すると、

弟が帝位についたため、謀反を企てる兄皇子がいます。彼が横恋慕している桂姫という美しい藤原家のお姫様がいます。ですが、彼女は皇子には少しも興味がなく、他に思いびとがいます。強引で横暴な皇子は「俺んとこに来ないならお前の首を切る」と脅しをかけるのですが、結局この桂姫は首を切られてしまいます。妹の初花姫は姉の死を嘆き悲しみ、帝のもとへ嫁いでも毎日悲しみに暮れています。彼女が詠んだ歌から、彼女は「玉藻前」と呼ばれるように。そんな彼女のもとにある夜、インド、中国を経て渡ってきた妖狐が襲ってきて、彼女を食い殺した上に乗り移ります。そして、謀反を企てる皇子と結託して、この世の神道仏教を滅ぼして魔界にすることを企むのですが・・・

というお話です。

狐と言えば「化けるもの」ですね。私の勝手なイメージでは、やっぱり狐が化けるのは美女、ということになっていますが、このお話の玉藻前(狐に殺される前)も美しくて可憐なお姫様です。

人形遣いと言えば

見所は「七化け」と呼ばれるクライマックス、狐さんが色々な人間に化けて踊るシーン。人形遣いの方が早変わりで人形を持ち替えて演じます。今回玉藻前(狐)を演じた片桐勘十郎さん、とっても素敵なおじさまでした。そして人形遣いと聞いて攻殻機動隊を思い出したそこのあなた。「イノセンス」で登場するハダリは赤い襦袢を着て遊女のような出で立ちをしていますね。遊女はもともと東国では「傀儡子(くぐつし)」とも呼ばれていました。人形芝居で人々を楽しませていたようです。「イノセンス」は釈迦や世阿弥の言葉なども出て来たりしましたね。あの映画の世界観は大好きでした。

映画やバレエに比べると4時間半という時間は長丁場ではありますが、飽きることなく最後まで楽しめました。同じくらいの尺だとオペラとかありますが、オペラは大の苦手。文楽は人形ですから美しくない歌い手も出て来ませんし、イメージが壊されることがありません。だから、その世界にどっぷりと浸れます。人形遣いの方々はもちろんのこと義太夫(語りとセリフの人)そして三味線・・・素晴らしかったです。私はまだまだ勉強不足なので、字幕を読んでないと物語に追いつけないのですが。三味線の音は低音の効いたカッコいい音色で痺れました。ただ、素浄瑠璃(人形無し)を鑑賞する自信はまだまだありません・・・

 

歌舞伎もそうですが、この幕を見ると気分上がります

やっぱ遊女がイイ

私の母が人形劇畑の出身なので、人形劇は幼い頃から親しんではきましたが、やはりこの年になってやっと文楽の魅力がわかってきたというか。人形、特に女の人形は本当に色っぽい動きをします。主役ではありませんが遊女が出て来てキセルを吸ったりするんですけど、もうホント好きです。二枚目の色男が出て来ると客席は盛り上がりますね。女性が多いからでしょうか。今年に入ってから能も鑑賞しましたが、能はもっと勉強不足な上に鑑賞に緊張を強いられるのでちょっと苦手なんです。あと三味線が鳴らないから自分の中では盛り上がらない。文楽や歌舞伎は客席もわーっと盛り上がれるので楽しいんですよね。江戸の人々もこうして盛り上がったに違いありません。歴史物より世話物のほうが私は好きですね。

数年前は近松の代表作とも言える「曽根崎心中」を観たのですが、最後は号泣したことを覚えています。

文楽はもともと上方文化であるので専門の劇場は大阪にある「国立文楽劇場」。東京ではなかなかお目当ての演目を観る機会がどうしても少なくなってしまうのですが、これからも観続けて行きたいと思います。

 

「クルマで巡らない国立劇場」に2件のコメントがあります
  1. 那須に逃げてきて石になった九尾の狐も美女だったそうですし、私がお祭りの狐が好きのは元々が美女だからなのか~と納得できました。笑 美女に化かされないよう気をつけないと

    1. Hiroさん、その那須の「殺生石」の九尾の狐の話が、まさに私が今回観た「玉藻前」です。

      お祭りの狐がお好きなのは、恐らく色っぽいからではないでしょうか。狡賢いのに魅力がある・・・まぁ、古今東西、男性をたぶらかすのは美女じゃないとお話になりませんからね。お気をつけください(笑)。

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