クルマで巡る那須ステンドグラス美術館

クルマで巡る美術館第7回は、那須ステンドグラス美術館(栃木県那須郡)です。

高原リゾート、那須

紅葉が始まるギリギリ前に訪れる機会が出来ました。なので、道路はそれほど混雑もなく。自宅からは圏央道→東北道で3時間半くらいです。
お天気が良ければ文字通り爽やかなドライブが楽しめるエリアですが、ステンドグラス美術館もそんな木立の中に上品に建っています。

地方リゾート地の美術館は多くの場合小規模で、コレクション自体も中途半端で期待外れなことが多いんですよね。そのわりに入場料は高め。行ったことを後悔することも少なくありません。テディ〇アとかオルゴール関連の施設は興味がまったくないのですが、ステンドグラスは別!!

ヨーロッパへ行くと必ず大聖堂や教会へ足を運びますが、やはりステンドグラスは文句無しに美しい。特にバラ窓が大好きです。パリのノートルダムのでっかいバラ窓は実際に見るとけっこう感動します。バラ窓の造形美を見ているだけで心が穏やかになるため、分厚い写真集まで持っています。同じくパリのサン・シャペルもステンドグラスで有名ですね。圧巻でした。どこを写真に収めていいのか迷うほどに圧倒的な量と質のステンドグラスが見られます。一時期カリグラフィーも描いていたので聖書の世界はあまり抵抗がありません。パリの図書館でも装飾写本なんかは夢中で見入りましたね。

 

サン・シャペルにて。写真撮り放題

 

そんな私の「好き」が、小さな規模ですがちょこっとずつ詰まったところ、それが今回の施設です。

駐車場は裏側と建物正面と2か所あるようでした。
私は最初裏側に入ってしまいましたが、お友達のクルマが1台も停まっていないことを不審に思い、お掃除のおじさんに「もうひとつ駐車場ってありませんか?」と聞くと、案の定一段上がったところにあるとか。お掃除していたおじさんに案内して頂いて、無事にメイン駐車場に停められました。

 

外見は英国、中身は・・・

コッツウォルズなう、とか言っても嘘っぽくないけど緑が違うなぁ

 

最初に感じるのは、重厚な建物だなぁということ。英国はコッツウォルズ地方の建物をそのまま持ってきた、という風貌。地味だけど丁寧に作られていてモノホンな印象。これは期待がもてそう!とばかりに、中へ進みます。入場料は大人1300円でした。学割は高校生までのようで残念。入ってすぐにミュージアムショップあり、さっそく寄りたくなるのをこらえて・・・あとでゆっくり見よう。

中はひんやりと冷たく、この温度は本物じゃないと出せないよなぁと納得しながら歩きます。小さなチャペルがいくつかあったり、廊下にも宗教画やステンドグラスが壁に。パイプオルガンのあるチャペルは天井が高くて解放感があり、小さなバラ窓も!ちょうどパイプオルガンの演奏時間になり、椅子に腰を下ろして聴いていると、神聖な気持ちになってきます。階段を上がると、演奏を間近で見られます。装置はエレクトーンに近いのでしょうか、両手両足を駆使して演奏されていました。パイプオルガンはホールでは高い位置にあったりして、間近で演奏を見ることはほぼ不可能です。私も初めて見ました。カッチーニのアヴェ・マリアに始まり、バッハとかたくさん弾いてくれるかなぁ?と期待しましたが、宗教曲はそれで終わってしまいました。残念。

 

回廊風の一角。いい雰囲気です

 

お部屋は書斎風のところがいくつかあり、布張りのソファなどはいかにも英国のお屋敷という感じ。座り心地も抜群ですので、休憩にもってこい。ちなみにデパートなどの靴売り場を巡ってみると、この秋はそんな「イギリスの貴族の屋敷に置いてありそうなソファのファブリックみたいな柄」がトレンドのようです。残念ながら私はそれほど好みじゃないのですが。館内は順路通りに歩いて行かないと迷子になりそうです。

 

よく手入れされています

 

美術館という名前がついていますが、同時にギャラリーでもありました。凝ったランプがあちこちに置いてあります。いいお値段。手作りですしね。アウトレットもありました。それにしても色のついたガラスというのは本当に美しいです。それは光を通すからでもあり、影すらも色がついているからでしょう。私は赤が好きなので、赤を多用した作品にどうしでも目がいってしまいます。これまで「ハンダごて」というツールを使ったことは2度ありますが、2度ともステンドグラスの小さな作品を作った時に使いました。今ではそのような技法で小さな作品なら比較的短時間で作れるのですが、昔のように鉄の枠にガラスをはめこんでいくのは気が遠くなります。

 

ヨーロッパの村にいます、な雰囲気

途中で外にも出られます。お天気がいいので屋外も気持ち良く。地方の小規模美術館にしては本格的な造りで、歩いているだけでも楽しいですよ。

 

石造りは素朴な印象ですが、重厚感たっぷり

 

英国にステンドグラスのイメージはこれまであまり無かったので(プロテスタントの教会は地味ですし)、中身をカトリック寄りにするのであれば外見もそっちのほうが良かったんじゃないかとも思いましたが、那須の風景には英国式のほうが似合うのかもしれません。聖書の物語をざっくり知っていると描かれているシーンや登場人物などがわかって、一層楽しいと思います。

ハリー・ポッターの世界が好きな人は、あえて悪天候の時に訪れると「らしい」かも。某Dリゾートの嘘っぽい街並みよりも、ずっと「本物」っぽくていいですよ。細部までちゃんと作り込まれています。那須には他にも小さな美術館がいくつかあるようなので、また今後も機会があれば訪れてみたいと思います。女の子はみんなこういう雰囲気大好きだと思うので、デートにもおススメ。チャペルでは結婚式も出来るようです。

ひとつ残念だったのは撮影禁止だったこと。
絵じゃないからいいじゃん、とも思うのですが、ギャラリーでもあるので色々問題があるのかもしれません。ならば1箇所だけでも「撮影可」なスポットを作ってくれるとかの工夫をして欲しいかな、と思います。お庭など周囲だけでも雰囲気は伝わると思うのですが、メインはステンドグラスですからね。階段の踊り場にあったアール・ヌーヴォー様式のステンドグラスの前とか、良いのではないかなと思いました。ミュージアムショップは大充実しています。ガラスの小物から写真集まで、もちろんステンドグラス作品も。けっこう長い時間いたような気が。私は赤いピアスと赤いベルを購入して大満足でここを後にしました。おススメです!

 

那須ステンドグラス美術館