クルマで巡る『鬼滅の刃 無限列車編』

※ネタバレほぼ無し

今年後半、地元の映画館まで足を運んだ作品はジブリの2作品と今回の鬼滅の3作品。すべてアニメーションだ。大画面で見るアニメーションはいい。純粋に絵が動くという芸術だと思う。

今更ながらまずNetflixでテレビアニメ版の『鬼滅の刃』を全話見て予習してから赴いた。鬼滅だけで一体いくつのスクリーンを占拠しているのだろう。世の評判は伊達じゃないのだな、と感じながらその中のひとつへ。

鬼、という存在は恐ろしくあると同時に魅力的でもある。「まんが日本昔話」が幼い私の愛読書だった頃から、異形の者たちへの憧憬は止むことがない。大人になってからも、人間がある理由で鬼に化けたり、地獄では鬼たちが待ち構えていたり、民話から絵巻、浮世絵の世界にも必ず彼らは登場し、私を魅了してきた。

テレビアニメ版を見た感想としては、「鬼退治」というシンプルな軸にハリー・ポッター的な家族の物語を絡ませ、これに感動する子供たちや若者は正しく育っているんじゃないか、と思った。

そして『無限列車編』。私も泣きましたよ、ええ。しかし、私の泣きポイントは「男というものは、若くして死んだ美しい母親というものを一生追いかけるのだな」という点。「若くして」「死んだ」「美しい」「母親」。これのどれも欠けてはいけない。代表格は『源氏物語』の主人公、光源氏だ。最初はただの節操ない女好きのチャラ男でしかない印象だったが、彼がなぜあそこまで女遍歴を繰り返すのか、それが幼い頃に死んだ美しい母親をひたすら追い求めていると理解してからは掌を返して同情した。マザコンもここまで来ると崇高でさえある。若く美しいまま消えた母親は絶対的な女神であり永遠に叶わない恋の対象なのだ。

どんなに強くタフな男であっても、永遠の憧れである美しき亡き母に認めてもらうことこそが、生きる原動力。ここに私は泣き崩れた。

テレビアニメ版を通して好きなキャラは王道の冨岡義勇さんと、胡蝶しのぶさんだろうか。しのぶさんが優しく丁寧な声色で微笑みながら鬼を殺害するところが素敵過ぎる。強い女はああでなくちゃ。怒鳴り散らしたり暴れたりする女が強いんではない。義勇さんのほうは、私は単純に必要以上にしゃべらない男が好きなので。

善悪の対決、という物語は古今東西多くの名作があるが、その多くに言えることは、悪のほうもじゅうぶんに、時には主人公以上に魅力的だということだ。その点で『鬼滅の刃』は良く出来ていると思う。大正時代、という設定もいい。コミックも落ち着いたら買い揃えたい。コミック全巻買うのは『のだめカンタービレ』以来だ。

鬼滅と並行してテレビアニメ版『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も見たが、こちらはもう胸に突き刺さりまくって声をあげて泣いた。まだ映画版にも間に合うだろうか。そのうち感想を記しておきたい。

言うまでもなく、日本のアニメーションは間違い無く現代の文化遺産。これからも素晴らしい作品に出会いたい。

「クルマで巡る『鬼滅の刃 無限列車編』」に2件のコメントがあります
  1. 鬼滅を観に行かれたとは意外です!私はテレビでやっていた長時間のスペシャルで観て、あぁ面白いなぁーと思いました。キャラクターも魅力的ですよね。私は禰豆子がかわいくて好きです。

    私が近頃行った映画は欅坂のドキュメンタリーと櫻坂のデビューカウントダウンです。オタ活に邁進しています。

    1. オタ活いいじゃないですか!!邁進してください。
      鬼滅は「日本昔ばなし」の感覚で観られるので大丈夫でしたよ。
      今週末は「民俗学」の講義が遠隔授業であるので、楽しみです。日本の伝承文化や行事は未来にも繋げて行ってほしいですね。
      若い人が興味を持つのが大事だと思うので、そのキッカケは何でもいいと思います。

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