クルマで巡る美術館第10回は、東京富士美術館(東京都八王子市)です。
ここは八王子の広大な創価学会の敷地内にある美術館。圏央道あきる野インターを降りて、整備された道路をしばらく走ります。途中で右折して山の中へ入っていくと、ちょっと独特な雰囲気になります。巨大な建築物が垣間見えますが、日曜のせいもあるのか静寂に包まれていて。今回初訪問だったので、どんな建物が美術館なのかわからないままナビの言う通りにクルマを走らせます。途中、パルテノン神殿を複雑化したみたいな建物が見え、「まさかあそこか!?」と気後れしましたが、そうではなくて至って普通の建物でした。
駐車場は無料で停められます。狭いですが係員さんがいますので誘導してくださいます。
今回は私個人はあまり関心のない東山魁夷(ひがしやまかいい)の作品群を友人に付き合って鑑賞。それにしても廊下にずらりと貼られた過去の展覧会のポスターが圧倒的。故宮のお宝展からダ・ヴィンチまで、お金かかってる感がすごい・・・
さて入館するとチケット発券機が。ボタンの表示が非常にわかりにくく、一応スタッフさんが一人いますけど結局は彼女に学生証を見せてからボタンを押す、みたいなよくわからないシステム。学割当日券で800円です。その後、長いエスカレーターで階上へ上がってからが展示スペースとなっています。ガラーンと空白だけが大きい館内は横浜美術館を思い出してちょっと嫌な予感。
東山魁夷はお好きな方がたくさんいらっしゃると思いますが、そもそも風景画にあまり関心のない私からすれば「まあ一応見ておくか」くらいの気分。同行した大学の友人から「何かしら得るものがあるはず!!」と説得されてやって来ました。ひとつわかったことは、東山画伯はとてもきちんとした方で、しっかりとした緻密な手順を踏んで制作されていたのだなぁ、と。私たちが学校で教わる通りの手順です。それはつまり、取材(スケッチ)→小下絵→大下絵→本画、というプロセスのひとつひとつに、非常に時間をかけて丁寧に作品を創り出していく、ということ。制作中のご自身のお写真を見ても、きちんと座られ、穏やかな表情でいらっしゃいます。
しかしここで私は文句を言いたい。
上記プロセスの過程を視覚化した展示方法は途中までとても良かったです。「道」という作品の写生に始まり、草稿、小下絵数枚、そして大下絵と順を追って見て行くと「最終的に本画はどのような仕上がりになったのだろうか?」とわくわくするものです。なのに、なぜそこに唐突にタペストリーが出てくるんでしょうか。本画は借りられなかったんでしょうか。本画を見せてくれよ!!と友人と叫びました笑。
全体的に彼の作風は同系色のグラデーションでまとめたものが多く、群青のきらめきなどはそれはもう美しくて、これは生で近寄ってみなければわかりません。ですが、意外にも中国の山々を描いたモノトーンの山水画風の作品がとても良かったです。上手い!と素直に思えます。霞の蒸気がこちらにまで漂ってきそうな筆致は素晴らしいの一言。ですが、好みかと言われればNo。展示の最後に画伯愛用の岩絵具や筆の展示がありましたが、こちらのほうが学べるものがありました。
ミュージアムショップも・・・まあ微妙ですね。というか本展覧会のオリジナル図録がないのはどうしてなんだろう。他の人も図録を探して見つからないため、カレンダーとか見ちゃったりして。私の場合は「ケンタッキー、たまに食べたらもう数か月は食べなくていいや」みたいな心境だったので図録があったとしても手を出さなかったとは思うんですけど。
青と緑が大好きです!という方には強力にお薦めしたい東山魁夷。日本画材の基本の青と緑、すなわち群青と緑青の魅力を堪能するならもってこいです。直観的に鑑賞出来る作品ばかりなので、現代日本画ってどんな感じなんだろう、という方にもお薦め。そして私には得るものがあったのかどうか・・・そうですね、岩絵具の美しさを改めて実感しました。今、自分が少しずつでも日本画を学べるということを幸せに思いましたね。