クルマで巡る玉堂美術館

クルマで巡る美術館第15回は玉堂美術館(東京都青梅市)です。

前回の「櫛かんざし美術館」の後に訪れました。

駐車場は通りから案内に従って下ったところにあります。係のおじいさんにピンク色の紙をもらい、美術館窓口でスタンプを押してもらうシステム。2時間までは無料だとか。戻ってきておじいさんに紙を渡しましたが、お金は払ってないなぁ。2時間超えてた気がしないでもないけれど・・・気のせいかな

フランス車で日本画の美術館へ

 

こちらのほうが川にとても近く、川沿いを歩いてエントランスへ入るようになっており、恐らく四季を通して雰囲気は最高なのではないかと想像します。

シックなエントランス

川合玉堂と言えば昨年秋に山種美術館にて没後60年記念展覧会が開催されたことは知っていましたが、その画風にあまり惹かれなかったため、鑑賞を見送っていました。

しかし好みの問題を除けば、間違いなく近代日本画の巨匠のひとりと言えましょう。
ほぼ同時代の川端龍子の画風のほうが私は好きなのですが(大観、龍子、玉堂が3人で写っている写真を見たことがあります。大観がいちばん好き勝手やってそうな風貌笑)、今回はせっかく玉堂作品を間近に見られるチャンスですし、この夏の間に人物画で四苦八苦していた私にとってはすべてが勉強と思い、訪れることにしました。奥多摩に所縁のある方だったことも初めて知った次第。

入館料は大人500円。学割で400円。

日本画なので館内は照明を落としてありますが、天井が高く狭苦しさはまったくありません。作品は大小の掛軸の表装が多く、モチーフは奥多摩の自然、人々の生きる姿、鳥などがメインです。紙本、絹本両方ありました。大きなものでは金地の屏風も。

よく手入れされた建物

圧巻なのは15歳の時に描いたという写生シリーズ。植物や鳥、野菜がモチーフで、日本画を学ぶ者にとってはまさにザ・お手本。葉の葉脈の構造や鳥の羽のクローズアップ、色のメモなども描きこんであります。普段から「写生が大事」と教え込まれていますが、こういった写生を見るとそれを実感します。この10代の頃の写生から伝わることは、とても真摯に絵と向き合っていたのだな、ということ。それもそのはず、17歳で円山四条派に入門。円山応挙と言えば写生をメジャーにした人とも言えます。幽霊画も有名。京都の人なので江戸東京とはまた違った趣があります。ただ、応挙のせいで現代の私たちも何かと写生写生と言われてるような気も・・・。

学校の先生の一人は「もし災害に遭ったら写生帖だけは持って逃げる」と言ってました。写生帖は画家にとって大事なネタの宝庫なんだなぁ、と思ったものでした。一級資料なのです。例えば私たちのような初心者でも、「桜が描きたいけど今は秋」ってな時に、「そう言えば春に写生した桜があったなあ」という使い方をしたり。私は桜は描いてませんけど。山に毎日通って植物や風景を写生し続ける画家もいます(取材)。私はきっと必要に迫られないとやらないかも・・・

玉堂の作品、若い頃の作品は「熱さ」みたいなものを感じました。40代くらいまでですね。結構な勢いがあるように思いました。モチーフも大きく描いていたり、大胆な運筆だなあと感じるものも。それ以降は徐々にさらっとしてきた印象。線も色もどんどんシンプルになっています。間近で見ても絵具の重なりや厚みはほとんど感じられず、水彩のような淡さ。モチーフに対する優しい眼差しも感じます。
しかし、やっぱり墨を自由自在に扱えるのは超絶技巧だと痛感。力の抜けた柔らかい墨線、無段階グラデーションの美しいぼかし、滝のようにエネルギー迸る表現まで。憧れるなぁ。
「背景を暗くするのに墨塗っていいですか?」と先生に聞いてみたところ、「墨は取り返しのつかないことになるから岩黒(絵具)にしなさい」と言われました。墨って、上から絵具を重ねても完全には消えないんですよ、不思議なことに。それを思うとますます巨匠と言われる理由がわかる気がしました。

でも、それはモノホンを生で見たからこそ実感出来ることです。印刷ではわかりません。

作品は、その作家の人生の移ろいまでも表す・・・だから、展覧会などで年代別に作品が展示してあると、とても楽しめます。作家自身の人生の変化とともに画風がガラリと変わる時、私はその理由を知ってみたいなと思います。玉堂のモチーフは年代を通してそれほど大きく変化していないようですが、素人目にも画風が変わっていくのがわかりました。ただ・・・この奥多摩が好きだったんだなぁ、ということは伝わりました。絵の中にいる生き生きとした人間たちを見ると。

駐車係のおじいさんが小さい頃、よく写生している姿を見かけたそうです

 

この美術館には玉堂の画室を再現した空間もありました。クラシックなイーゼル、そして座椅子、右側に画材の乗った机。皿、筆、筆洗・・・スペースも大きく、理想的な日本画のアトリエ。そして、玉堂使用の岩絵具の展示も!当然すべて天然ですから大変高価なものです。水分が蒸発して絵具が固まった溶き皿も展示してありました。

筆掛はあこがれ。私は100均のキッチンツール入れを使用・・・

 

思慮深い雰囲気の枯山水の庭園まであります。きちんと管理されていて、小さいけれど美しい空間でした。そのせいか充実度が半端ありません。

川のせせらぎを聞きながらお庭の鑑賞

小さな美術館ですが、素晴らしいロケーションの中、じっくり日本画の正統を味わうための場所。

記事内の画像は、同行したお友達が撮影したものです。時間が切り取られているような趣です。

玉堂美術館

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クルマで巡る玉堂美術館” への2件のフィードバック

  1. DRIVER "A" のコメント:

    撮影ありがとうございました。
    画室が特にお気に入りです。
    ひろさんのレンズはまさに写生のような役割をするのですね。自分の見たままを写す。

    駐車料金、そうだったのですね!おじいさんに感謝!!

    美術館は知識なんかなくてもいいと私は思ってます。むしろ知識なしで見たほうが素直に鑑賞出来ると思います。知識は後からでもつけられますが、本物の作品を生で見られるのはその時だけですもんね。かくいう私も玉堂の新発見があり、大変勉強になりました。好き嫌いは別として。

    また機会があれば美術館に行きましょう。

  2. HIRO@LUTECOCO のコメント:

    何も分からず入館した私。こちらのブログも勉強になりました。美術館自体数年振りでした。絵の鑑賞をするのも良いものです。駐車場のおじさんと何話してるんだろうと思っていましたが、良いお話が聞けたようですね。作品の主と縁のある方が駐車場にいらっしゃるとは思いもしませんでした。時間は過ぎていましたが「良いですよ~」と免除してくださったんです。

    時間が切り取られているような趣です←歪みや明るさという点で、自分が見たまんまに撮れるレンズだと思って気に入っています。それは時間を切り取り名前を付けて保存しているようなものですね。安いレンズなので自動の部分はいっさいなく、焦点や絞りを都度弄らないと撮れないのが欠点でも利点でもあります。今時スマホのように勝手に色々調整してくれるカメラとレンズが当たり前ですがマニュアルは自分の良いようにできるのが良いですね。それは車にも言えることでしょう。

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