クルマで巡らない京都 冬の特別拝観など

自分の愛車愛を語るサイトのはずが、最近は旅行手記みたいな感じが続いている。別に愛車愛が冷めたわけではなく、相も変わらず愛車ルーテシアのことは愛でているのだが、学業の面でのっぴきならない状態になってきており、当初の4年できちんと卒業、という目的は早くも崩れ去った。ならば5年で、と決心を新にし、学習と趣味を兼ねた旅が多くなってきている、という理由。学期末の今あわてても仕方ないのだけれど。

この冬、いくつかの寺院の障壁画などが期間限定公開されると聞き、思いつきで京都へ出掛けた。しかし今回は3日滞在するので普通に新幹線。夜行バスは確かに癖になるが、あれは日帰りのみでこそ威力を発揮する。小田原発のひかりで京都まで4駅。小田原停車をもっと増やして欲しい!

※なお、作品等は撮影禁止のため、画像はお寺や観光団体のHP等から頂戴した。

 

京都の珈琲はここ!!

京都の夜はここに来なければ始まらない。エレファントファクトリーコーヒー。

このカウンター席が大好き

前回より時間が遅めだったせいか、満席で結構な賑わい。海外からのお客も多い模様。ここはクルマ仲間に教えてもらったバーっぽいカフェなのだが、コーヒーの味、店内の雰囲気、調度のひとつひとつに底知れぬ美意識を感じて、訪れるたびに嬉しくなる。使い込まれた木のカウンターにもたれて絶妙なバランスのカフェ・オ・レを一口飲んだ途端にホッとする。と同時に「京都へ来たんだ」という実感も。京都へ来るたびに通いたい店である。

 

憧れの日本画材屋さんへ

 

翌日は、イノダコーヒ本店にてモーニングを頂き(可もなく不可もなく)

奥行があり、2階にもテラスにも席が。大きなお店

 

 

そして、ワクワクしながら日本画材店の彩雲堂さんへ徒歩で向かう。

次は岩絵具を買いに来たい。量り売りです

 

近くには「京都三大旅館」のうち2つがある

 

いやー、入りづらいでしょ、こういうお店。なので私は店主が出て来たら自己紹介をするようにしている。「お名前を伺って関東から来ました。日本画はまだまだ初心者なのですが、連筆を是非使ってみたくて・・・」みたいな感じで。
お喋り好きの優しいおじいちゃんで助かった。色々なことを教えて頂き、ものすごく勉強になった。結局、東山魁夷に倣って?連筆3本、膠匙(これまで100円ショップのシュガースプーンで代用していたのだ!)、ずっと使ってみたかった陶器の筆洗で朝から散財。お金は減ったが、やる気は増えたので良しとする。

眺めているだけで幸せ。道具って、そんな側面がある。膠匙の絶妙なカーブったらどうよ?

 

狩野派のお仕事拝見

東照宮もこんな感じなのかな?

京都における徳川趣味と、アトリエ狩野の仕事を堪能するために来た。二の丸御殿の三の間が特別公開になっているそうだが、私のお目当ては収蔵館のほうにある狩野探幽のほんまもんの障壁画(襖などに描かれた絵)だ。私は常々、大河ドラマで狩野派を取り上げて欲しいと思っている。京都、江戸、地方に分かれても400年間脈々と職業絵師の地位が続いていたのだからすごい。私の好きな江戸時代の絵師たちも、まずはみな一様に狩野派メソッドを学んでいる。

 

 

御殿の空間と複製障壁画を観る。歩くたびに鶯が鳴くような音がする廊下。エキゾチックな天井の文様。建物自体も国宝なので、障壁画の複製もそれに合わせて自然な古色で復元されているところに好感を抱いた。公的な場所は威圧感のある大きな松がメインのモチーフ(狩野派と言えば思い浮かぶのは松だよね)。

大広間では大政奉還を再現した人形が置かれ、ビジュアル的に説得力がある。将軍様(この場合は慶喜さん)があそこに!ってな感じ。

等身大の人形のおかげで空間の大きさがわかりやすい

 

一番気に入った黒書院では、このようなプライヴェイト感のあるモチーフも。

 

その後、収蔵館で本物の障壁画と対峙した時の感動は言葉で表せない。今期は狩野探幽25歳の作と言われているものが展示してあった。
褪せた色、剥がれた絵具や金箔ですら本物の圧倒的エネルギーを今に伝えてくれる。私はリアル狩野派の仕事を前にし、涙ぐんだ。ビバ御用絵師。これまで「狩野派?似たような絵ばっかりで退屈~」とか思っていて大変申し訳ございませんでした。

こちらが本物。京都に来るたびに訪れてしまいそうだ

 

襖の構造。「本紙」というところに絵が描いてある。ガイドブックより

 

1200円のガイドブックが素晴らし過ぎてお値段以上

退蔵院でお茶タイム

二条城が予想以上にすごかったので、次に訪れた妙心寺の三つの塔頭(天球院、麟祥院、退蔵院)の印象がまったく残っていない。ただ・・・特別公開と言っても多くの障壁画は高精細複製画なのだ。二条城のように建物に合わせてあえて古色で仕上げているのは良いが、建物は古いのに絵だけがキンキラキンだとちぐはぐな印象を受ける。「完成した当時はこんなにキラキラだったのね」と想像して納得するしかない。疲れたので退蔵院でお茶を頂いて一休みする。晴れているのに、雪が舞い始めた。

その後はお待ちかねの泉涌寺の塔頭、雲龍院へ。雪見窓からその名の通り雪景色が見られるかもしれない!!

 

雪化粧の雲龍院

もう今日はお腹いっぱいに美しいものが見られた。とても寒いけれど、それすらもいい。やはり京都は冬か夏がベストシーズンだと思う。紅葉は年々美しくなくなってきているそうだ(タクシーの運ちゃん談)。私は真夏に「うへー、暑い」とグダグダしながら歩く京都も好きなのだ。だから、底冷えする京都も好きだ。

 

入るだけで感激する喫茶店

翌日は私の大好きな昭和の香りがする喫茶店、六曜社にてモーニングを楽しむ。
今時マッチが出てくる喫茶店なんて!!感動だ。灰皿だって店オリジナルの焼き物である。トーストと珈琲だけで幸せな気持ちになる。常連さんと観光客が半々くらいか。客は全員が喫煙者なので堂々と煙草を楽しめる。

灰皿の奥にあるボトルのようなものはウェットティッシュ

その後、大原行きのバスに乗り、45分ほどで蓮華寺へ。
北へ向かうほど雪が多くなってくる。これはもしや絵葉書のような美しい瞬間が見られるのかもしれない、と期待にむせそうになる。

 

雪の蓮華寺

この天気だから人はいないはず!と思っていた私が甘かった。すでに写真愛好家の方々が5名ほどいらして、静寂の中にシャッター音だけが響く。

何も考えなくていい。ただ感じるだけでいい。そんな場所。

池に朱色の鯉が2匹泳いでおり、それが素敵なアクセントになっていた。ここでも圧倒的な美を目の前にして涙ぐみそうになる。

 

狩野派のライバル、長谷川等伯の仕事拝見

蓮華寺から途中までバスで南下し、京阪電車に乗り換えて七条まで下る。ここいらの私鉄事情はよくわからない。我々は何となくJRを軸に考えてしまうのだが、関西ではそうではないらしい。

次は七条通りの突き当りにどーんと構える智積院へ。ここは豊臣の寺から徳川の寺として再生した寺院。元々は秀吉が鶴松の菩提寺として建てた寺を家康が僧に与えて(事実上ぶっ潰したわけね)、智積院としたらしい。二条城もそうだけど、江戸幕府がいかに京都に目を光らせていたか実感として感じることが出来て、楽しい。

さて二条城では狩野派工房の大きな仕事を見て心が震えたが、こちらは狩野派のライバルとされている長谷川等伯親子の障壁画が目的だ。建物にはめ込んであるものはやはり複製画であるが(ちょっとひどい出来)、収蔵館に展示してある本物はやはり凄かった。松がメインではあるが、画面いっぱいにあらゆるモチーフがバンバン描き込んである。余白がないので観ているこちらも緊張する。我が強く自信家で、わりと激情家でナルシストだったのではないか、などと想像した。結構好きだ。ちなみにこの作品は徳川のために描かれたものではなく、豊臣の寺だった頃に描かれたものだそうだ。26歳で亡くなった才能ある息子が描いた桜もなかなかであった。

 

智積院は庭も池の水が抜かれて見るに堪えない状況であったので、大きなお寺は印象が散漫になってしまいがちだ。まあいい。目的は達成した。

そこから徒歩で向かいの国立博物館のショップへ少し立ち寄り、バスに乗って祇園へ。少し裏へ入ったところのこれまた昭和の香りのする喫茶店でタマゴサンドのランチを。

つまりは卵焼きサンドであった。オムレツをパンで食す、という感じ。ふわふわで美味しかったけど、私はマヨネーズであえたアレが食べたかったのだ。

 

唐突に現代アートをぶっこむ

それから徒歩でフォーエバー現代美術館へ。
ここは2月末で閉館になる期間限定美術館。歌舞練習場を借りて草間彌生センセイの作品を展示している。

いきなり草間世界。可もなく不可もなく。場内はアジアの若い女子たち&カップルで賑わっていた。

私は頭の中が完全に伝統的な日本画モードになっていたので、さらっと見て終わる。

 

もはやアトラクションなお寺

最後に建仁寺へ。

ここが有名なのは、あの「風神雷神図屏風」を持っているから。様々な絵師が模写しているが、ここにあるのは原点である俵屋宗達のもの。しかしやはり本物は国立博物館に収蔵されている。ここにあるのは高精細プリントなのだ。本物がこんなにキラキラしているわけないのだが、海外からの観光客は興奮している。

 

この寒さでもアジアの女子たちは着物で頑張っている

 

庭を目の前にして、庭を見ていない人々

あちこちにセルフ記念撮影マシンがあったり、ショップが風神雷神グッズで溢れかえっていたりで、まるで禅寺の気がしない。

こういうのはあまり趣味じゃない

ただ、塔頭の両足院、永源正伝院は悪くなかった。両足院は初夏の半夏生が有名だが、今の時期は地味な庭である。

 

ちょっと詰め込み過ぎてかなり疲れてきたが、最後の力を振り絞って烏丸にある化粧筆専門店へ。前日は日本画用の絵筆を買ったが、この日は化粧用の筆を3本。絵も化粧も、恐らくクルマのメンテもそうだが、「お道具」は大事な上に、持っているだけでも気分が上がる。

冬の京都は2度目だったが、お寺の床の冷たさを失念していた。タイツの上から靴下を履いていたがそれでも冷えた。翌日はそこにカイロを仕込んで乗り切ったものの、スリッパを貸し出す寺院はそれほど多くない。唯一、雲龍院だけが毛糸で編んだ靴下を貸し出してくれたので、快適に見ることが出来た。

今回お世話になった西鉄ホテルもとても良かった。

部屋はコンパクトで無駄がなく、お風呂が広い。赤をアクセントにした内装や丁寧なスタッフなどかなりの高得点だ。立派なレストランがなくても周囲に星の数ほど飲食店があるので不自由しない。部屋を鴨川側にしたので、眺めもそこそこ。三条界隈は私にとって一番動きやすいエリアなので、今後も定宿にしたいかも。

部屋からの鴨川ビュー

次回の京都は4月に予定している。

 

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