クルマで巡らない故宮博物院・台北ほか

まだパリの美術館群も書きあがっていないっつーのに、いきなり台湾。パリのほうは内容が濃すぎて未だ草稿の域を出ず。なのでサクっと書ける台湾のほうを先に書いておく。とは言っても連休前半の話だから、もうだいぶ時間がたっているが・・・

京都で講義を受講した後、関空からLCCのスクート航空で高雄まで。

高雄の朝。この風景だと、海外に来た!って感動はほとんどない

 

今回の台湾旅の第一の目的は「故宮博物院」である。

北京には過去5回ほど旅しているが、清朝好きとしてはお宝がほぼ台湾にあることに納得がいかず、北京の紫禁城内に宝物殿のような充実した博物館を設置してそこで見せて欲しいと昔から思っているが、恐らく実現しないだろう。
が、皮肉なことに蒋介石が持ち出したことで文革での破壊行為から護られた、とも言える。

台北の故宮博物院を訪れる前に、嘉儀にある新しい博物院の「南院」にも行ってみた。だが、とりたてて記すことは何もなく・・・近代的でスタイリッシュな建物ではあったが、最寄のバス停から徒歩20分というのはいただけない。館内も広くて明るいが、空虚感が漂う。

建物は見えているのに辿り着かない。そして、人がいない・・・

客よりスタッフの数のほうが多かった。そして彼らは客を見かけるとポン引きのごとく「こちらの展示室へ是非どうぞ~いいものありますよ」と誘ってくるのだ。断る理由はないため、彼らの誘いの通りに展示室へ入る。それでもあっという間に全部見終わってしまった。20分かけてまたバス停まで戻るのかと思うとちょっと憂鬱に。

その後、新幹線で台北入り。
日本の新幹線の色違いみたい。

日本人のゴルフコンペ帰りらしいおっさんの集団と一緒になった

商務車両(グリーン車)に乗ると、すかさず珈琲とお菓子のサーヴィスがある。私は茶菓子より煙草吸えたほうが幸せなんだけどな。

台北では台湾通の友人が紹介してくれた駅直結のサーヴィスアパートメントホテルに部屋を取ってあった。いかにも海外駐在員が暮らしてそうなとこだ。日本のマンションと同じ感じがしたが、内廊下を自転車で走っている人々を見るとやはり違う。駅直結と言っても台北駅はとても広いので、地下街をかなり歩く。それでも東京駅よりはマシだった。

さて、本家の博物院は台北駅から地下鉄でシーリンという駅まで行き、そこからバスに乗る。初めてでも簡単だ。なぜなら、シーリンで降りるほとんどの人が故宮博物院に行くので、人波についていけばいい。

海外では積極的に公共の交通網を利用するようにしている。なぜならば、わかりやすいからだ。日本では未だに首都圏のターミナル駅で迷子になる私でも、海外のダイレクションは非常にわかりやすく、迷ったことがない。台湾は漢字もあるので地元の小田急線を使う感覚で楽ちんだった。今はだいたいどの国でもスイカみたいなプリペイド交通カードがあるので、空港に着いてすぐそれらを購入しておけば安心だ。

ちなみにMRT(地下鉄)は車内での飲食禁止である。厳しい罰金が待っている。
日本人は少し注意したほうがいいかもしれない。

当日は雨だったが、想像以上に混雑。日本では連休だったためか、日本人も多い。

紫禁城は朱色なんだけど、ここは竜宮城みたい

 

チケットを買うのに並び、入場するのに並び、すべてにおいて並ぶという行為を乗り越えなければならないのは相当なストレスだ。パリではパスを持っていたし、夜間など人が少ない時に行ったり、そもそも観光地ではない美術館に行ったりでストレスがほとんどなかった。

アジア圏からの観光客が主らしい

 

しかし、ずっと見たかった清朝のお宝群、私はどうしても書画が見たかった。工芸、焼き物系はあまり興味がないので、書画コーナーから攻めることにした。

が、結果的にはかなり失望。
書画コーナーは台湾の画人の特別展をやっており、肝心な清朝時代の作品などひとつもない。清朝の伝説のイタリア人絵師、カスチリョーネの作品や、歴代皇帝が押した落胤などもじっくり観察したかったのに、それ自体がないのだ。もっと見せなさいよ!!と心の叫びを抑えきれなかった。

しかも博物館としてはスペースがかなり狭いので、団体がガイドの説明に足を止めるともう通れない。私は2度ほどJTBのツアーに通せんぼされた。

あまりの欲求不満さに書店で本を何冊か買う。それらの本には数多の素晴らしい書画が掲載されているというのに、なぜここまで来てひとつもモノホンにお目にかかれないのだろう。悔しいのでカスチリョーネの複製画を買い求めた。彼は中国名を朗世寧という。イタリアから伝道師として、康熙時代に清朝にやってきた人だ。彼は当時のイタリア人芸術家と同じく、絵だけでなく、彫刻や建築なども手掛けた。芸術家がまだ職人だった時代だ。

複製でなく本物を見せて!

北京に円明園という庭園があり、その一部に美しい西洋式の庭がある。欧米列強の破壊行為のあと、廃墟のようになっているが、その姿をそのまま今でも見ることが出来る。先人が作った美しい造形物をどうして破壊することが出来るのだろう、と胸が痛むが、歴史を鑑みればその繰り返しだ。

ともあれ、彼の絵は上手い。そして、西洋と東洋の交合を見るようで大変興味深く、美しい。嗚呼、オリジナルを見たかった・・・

鶯歌という陶器の街にも行ってみたが、平日だったせいか活気もなく。

雰囲気は悪くないけども・・・

 

また、食べ物に関してもそれほど関心がないし、数多のガイドブックに掲載されているようなスイーツ系もまったく興味がないので、故宮博物院に行ったらもう後は「変身写真」のみである。

変身写真はその名の通りコスプレしてメイクして写真を撮ってもらえるというサーヴィスで、チャイナドレスと清朝の服を着てみたかった私はここぞとばかりに日本から予約をし、撮影に挑んだ。

注意事項に「すっぴんで来てください」と書いてあったので、すっぴんでマスクをして行く。日本語の上手なメイクの女の子に「別人にしてネ」と言い、メイクを施してもらう。ファンデは確かに厚塗りだが、鏡の中に出来上がった自分は何となくいつもの化粧した自分でちょっとテンションが下がる。ただ、カツラをつけたりしてみると、「先帝のお后(第4夫人くらい)」くらいには見えるようになった?

撮影前にメイクの子が撮ってくれました

担当カメラマンがクルマ友達の一人とそっくりでのけぞってしまったが、顔ばかりでなく喋り方やしぐさまで似ており(英語にも関わらず)、後で友達にそのことを報告すると、彼のドッペルゲンガーが世界中にいるらしい。よもや台北でそのうちの一人と巡り合ってしまったのだった。

台北に入ってから体調がイマイチでお腹が張っている状態でのチャイナドレスは厳しいものがあったが、そこは修正に期待したい。最初にスタッフにオススメされたチャイナドレスはあまりに露出度が高く、「あと20年若かったら着るわ 」と言ったら「チャイナドレスは年齢関係ないネ! 」とあやうく説得させられるところだった。

至ってノーマルなドレスを選んだが、「上海マフィアの愛人」のイメージを想像しながら撮影に挑んだが、果たして出来栄えはいかに。

1か月後に製本されて自宅に送られてくるらしい。2パターン、12枚で2万円也。私は翌日帰国しなければならないので、どのショットを使うかは友達のドッペルゲンガーであるカメラマンに全権委任した。

ちなみに男性の変身プランもあるので、皇帝とかに変身してみたい人は是非。

3時間という短時間フライトで気軽に行けるし、時差も1時間だし、台北では驚くほど日本語が通じるし、漢字も繁体字なので日本人にとっては馴染みやすい。ちょっと裏通りへ入ればアジアチックな雰囲気も味わえる。ただ、私にはちょっと退屈な旅であったことも否めない。今後また行くとしたら、故宮博物院での企画展で見たいものがあった場合のみかもしれない。

帰りのフライトでは、久々にタラップを上がって機内へ。
足の前にスペースが欲しかったので非常口の席にしたところ、ここに座れるのは英語が理解出来る人に限られるそうで、CAさんにまずそれを確認された。有事の時には窓を外したりと色々ミッションがあるらしい。

LCCはちゃんと飛んでくれさえすれば快適だし何の問題もなかった。飲食も買って持ち込めばいいし、6時間くらいならLCCでも大丈夫だと確信。

パリの後だったせいか、とにかくすべてが楽ちんで拍子抜けしてしまったが、気楽に安くアジアを楽しみたいならお薦め。