クルマで巡らない初詣2020

あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。

さて、年末に部屋を整えた甲斐があり、無事に廃人化している。ジャンク片手に海外ドラマや歌舞伎のDVDなどを観ている。体を動かさないとアタマも働かないので勉強はすでに諦めた。おまけに閏年、ホントに東京事変再生ということで、『選ばれざる国民』(英題のほうが直球→The Lower Classes)などと言う切り込んだ歌を延々とリピートし続けている始末。事変と言えば今でも「新宿は豪雨〜」が脳裏に響く自分としては輝きを失いつつあった後期事変を思い起させる曲調だが、まあいい。今年最初の懸念は、彼らのライブチケットが入手出来るかどうか、だ。チケットを確実に入手するために年会費を払ってファンクラブに入っているのだ。

自室内で廃人化していても、行くべきところには行ってきた。
前回、私の江戸好きは遺伝子レベルのお話をしたが、さっそく江戸に初詣。参拝してきたのはこちら。

葛飾北斎大先生の肉筆画『新年風俗図』。

こちらは墨田区にある「すみだ北斎美術館」にて。

この美術館については後述するとして、新年早々に尋ねて行ったメインの場所はこちら。

久々に来た両国の江戸博!

 

大浮世絵展(今回は春画無しです)

初心に戻ろうと訪れた浮世絵展。

ところで江戸博はいつ行っても楽しい。行くと誰もが「なんか江戸って楽しそう!江戸に生まれてみたかった」と思ってしまうほど楽しい。

江戸時代の中村座を復元した実物大セット。この日は正月の特別企画でからくり劇場をやっていた。

 

こういうお店で働いてみたかった!と思わせる絵草紙屋。今でいうブックスタンドに近いか。想像力を掻き立てられる。他にも実物大・江戸長屋のセットだとか、両国橋の賑わい模型だとか、江戸城の模型だとかもあって私にとっては最高のテーマパークなのだ。

さて、お目当ての「大浮世絵展」では歌麿、写楽、北斎、広重、国芳の5人のビッグメジャー絵師の作品を堪能。歌麿の美人画と広重の江戸100は個人的に必見だったので、見応えがあった。浮世絵はけっこう観る機会は多いのだが、やはり何回観てもいい。写楽は役者絵、北斎は富嶽三十六景、国芳は武者絵や猫絵が中心。けっこう混雑していて、日本人の浮世絵好きを再確認した。やはり北斎の富士山シリーズは大人気。

私が大のお気に入りとする作品もイン。以下、図録より一部抜粋。

『青楼十二時 丑ノ刻』歌麿

長身美人が好きなので、吉原の遊女の1日を描いたこのシリーズは大好物だ。特に左の丑の刻の絵がいい。首の角度、足の見え具合、草履の引っ掛け感・・・歌麿のセンス恐るべし。ちなみにこのシリーズは蔦重こと蔦屋重三郎プロデュース。

素晴らしい浮世絵を見るたびに、彫師摺師の超絶技巧にも感嘆する。私たちがこうして後世になっても観られる作品は一流がほとんどだが、以前読んだ渓斎英泉を描いた小説の中で、売れない絵師は組む彫師摺師も三流との描写があった。そっちも見てみたい。

 

『名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣』広重

江戸100はどれも素敵だ。私の一番は左の絵。吉原の遊女の部屋から猫が浅草方面の人の行列(酉の市)を眺めている。だが私が好きなところはそこではなく、手前の簪や手拭い、湯呑みが醸し出す「そこに確かに女が息づいている」というリアル感。人物を描かずして人物を意識させる手法。好きだ!!

浮世絵以外の企画展では綱吉や家斉などの書画、彼らを手ほどきしたであろう御用絵師狩野派の絵などを拝見。これまで何度も言っていることだが、狩野一族はNHK大河ドラマにすべきだと思う。徳川勝利のあと、京都に残った組と江戸に行った組で分かれたあたりに興味がある。なんといってもあの時代、絵と言えば狩野派がメインストリームだったし、町絵師もみな最初は狩野派に学んでいるのだから。私も以前は御用絵師だけに決まり切った構図、モティーフなど退屈極まりないと思っていたが、本物を見ると彼らの絵師としての血脈、誇り、伝統は半端ねエ、と実感する。日本画を学ぶ者としては、時代が違えば自分も習っていたかも。今は非常に関心を持って鑑賞している。また二条城に行きたくなってきた。

 

さて、江戸博で江戸を堪能したあとは、近くにある「すみだ北斎美術館」へ。

北斎通りなんてあったのね。茅ヶ崎にも雄三通りがあるけど。

 

北斎っぽくない?近代的なオシャレな建物

来たい来たいと思いつつなかなか来れなかった北斎美術館。
北斎はそのほとんどの生涯を墨田内で移動しながら過ごしたということで、このあたりは北斎ゆかりの地。とは言え、あたりはマンションだらけなので当時をしのぶには変化し過ぎてはいるが。

こちらで冒頭の『新年風俗図』にお参りをした。
浮世絵よりも断然観る機会の少ない肉筆画(※版画である浮世絵に対して、絵師が実際に筆で描いた絵を肉筆画と呼ぶ)、北斎のそれはいつ見てもどの絵でも圧倒的画力を目の当たりにして目眩がするほど。

美術館はこじんまりとしていて明るく美しい。北斎のイメージからは程遠く、やや物足りないボリュームではあったが居心地はいい。小汚い長屋で絵を描く老いた北斎と娘おえいちゃんの実物大模型が楽しかったので、美術館自体も小汚い江戸長屋風の建物にしてくれたほうが良かったナ。

江戸博とセットで廻るとちょうどいい感じだ。

今年は楽しみにしている浮世絵関連の美術展がいくつかある。昨年はパリに行ったこともあり、かなり西洋画にフォーカスした一年だったので、今年2020は初心に戻って江戸美術にロックオンしたいと思っている。

海外でもっとも多くの良質な浮世絵コレクションを持っているのはボストン美術館だが、今年はその展覧会もあるので待ち遠しい!!