クルマで巡らない堀江栞『触れえないものたちへ』展、他

推しピアニスト角野隼斗のコンチェルトを聴きに久々に新宿へ出た。これまた久々の小田急線乗車だったのだが、乗った瞬間なんか妙に落ち着く。いつもと違うこの感じ。この落ち着きは何処から来るのだろう、とぼんやり周囲を観察してわかった。床が木目なのだ!

これはいい!

床が木目になっただけで、これほど車内の雰囲気が変わるとは。殺伐となりがちな電車の中、こういった空間作りはもっと進んで欲しい。

この日のコンチェルトはラヴェルの作品、ピアノ協奏曲ト長調。ジャズの要素が入った有名な作品だ。『のだめカンタービレ』では、のだめが「千秋先輩とこの曲を共演したい!!」と興奮したシーンがあった。私にとってもかなりの思い入れがある作品だが、角野隼斗に出会って以来、ずっと彼のような演奏家にはハマるだろうと想像していた。彼は普通にジャズも弾くし、超絶技巧の持ち主でもあるので、第1楽章、第3楽章は華やかで楽しく素晴らしかった。

オペラシティのコンサートホールで開催

そして、私の妄想通り、彼が紡ぐ高音の弱音の美しさが第2楽章では際立ち、号泣ものだったということを記録しておきたい。オケは東京シティフィルさんで、東京バレエ団の舞台のオケピットで何度かお見掛けしたことがある。オケだけの音はまだちょっと疲れてしまうので、ピアノコンチェルトが今の私にはちょうどいい。

日は変わって、故郷鎌倉へ。残念ながら雨。自宅近くのバス停から大船駅行きに乗り、大船駅から横須賀線で。今はすっかり東海道線の人となった私だが、以前は横須賀線の人だったことを思い出す。懐かしい鎌倉駅で下車すると、すでにもうすごい混雑だ。なのに、相変わらず気の利かない駅というか、使い勝手の悪い駅であることにはもう何十年と変わらない。

今回は神奈川県立近代美術館鎌倉別館(長い)にて開催中の、堀江栞さんの作品に会いに。と、途中の八幡様ではこんなモノを発見。

昔は奥の建物の場所が近代美術館だった。そこのカフェで短期間バイトをしていたことがある。

入場料1000円もするの!?強気だねぇ

大河ドラマ、私は観ていないが、かなりの人気とみた。雨にも関わらず、駅前から八幡様までも大混雑していた。小町通りも、私が幼い頃から存在している店は数えるほどしかない。どんどん新しい店に変わって行く。観光客を後目に、ひたすら八幡様の横の坂をとぼとぼと上がって行く。小さなコインパーキングが点在しているが、10分100円とな。いや、週末にクルマで鎌倉市内はNG。藤沢からなら、JRでも江ノ電でも行けるし。

漸く到着。

メインの展覧会は、松本竣介の生誕110年企画らしかった。彼の作品でもっとも有名なのは、これ。

会田誠さんが「尾崎豊っぽい」と評した『立てる像』(自画像)

学割とJAF割で450円の入場料。でも公立美術館はやはり無料にすべきだと思うの。この美術館は美術館と言うには本当に寂しくて、見るからにお役所の建物だし、色々と残念だとは思っていた。葉山のほうはもう少し洗練されているが、あそこもアクセス的にはとても不便。近代美術館とか現代美術館って実はとっても面白い場所なのに、もったいないと思う。

さて、今回は左半分が松本の、そして右半分が今回の私の目的である堀江栞さんの展示スペースだった。

まず、堀江さんの作品を是非見て頂きたい。

堀江栞 | SHIORI HORIE website

私は彼女の描く人物にとても惹かれて、本物が見たいと思っていた。特に『後ろ手の未来』と題されたシリーズが好きで、今回もその作品群の前で長い時間を過ごした。岩絵具を重ねた画面は、暗い照明の中でもキラキラと光っている。そう、これは日本画なのだ。そういう意味でも、これから卒業制作に取り掛かる私に何かしらのヒントを与えてくれるかもしれない、という期待もあった。

岩絵具の煌めき感は残っていても、全体としては非常に暗い絵だと思う。圧迫感、閉塞感、諦め、悲しみ、孤独。。。そんな単語が浮かんでしまう。なのにすごい引力。岩絵具ってこんな表現が出来るんだ、としみじみ。何せ、学校でも周囲は花とか木とか葉っぱを描く人たちばかりなので、日本画の現代人物画ってなかなか作例がないのだ。所謂「美人画」はもうお腹いっぱいだし。堀江さんの作品は、そんな中でとても貴重だと思った。心がざわざわし出す、そんな作品たちだ。会えてよかった。

翻って私のほうは、愛車の後ろ姿を描くのに四苦八苦している。皆さん、クルマの絵、描けます?特にパースが苦手な私にとっては悪夢のようなモチーフ。ボディの映り込みなど描くのは楽しそうだけど、やっぱりカタチを取るのが一苦労。イラストじゃないので線画できっちり写実に描かなくても良いのだけれど、それがクルマであると認識出来るくらいには頑張らないと・・・

帰りは江ノ電で藤沢まで戻る。やはり観光客で混雑しているが、観光電車なので仕方がない。京都の市バスよりは若干マシだ。地元ながら、江ノ電を日常の足としては考えにくい。でも時々乗りたくなる。考え事をするのにはもってこいの電車だ。またキャラウェイのカレーに挑戦しよう。

「クルマで巡らない堀江栞『触れえないものたちへ』展、他」に2件のコメントがあります
  1. 堀江栞さんの「さまよう」がエヴァに出て来た使徒に似ていて衝撃を受けました。それぞれ何を見て何を考えながらそれを描いたのか、なぜ似た形状になったのか、とても興味があります。キリンのような不気味な作品もありとても惹かれました。

    公立美術館は、少なくとも日常的に気が向いた時に訪れることができるくらいには開いていてほしい(それが当然)くらいに思っていましたが、私が住む浜松の市立美術館は展示会がある時にしか開いていません・・・。そんな浜松市美術館では現在浜松在住の作家さんの個展(版画作品)をやっていて、作品を見てとても衝撃を受けました。圧巻でした。そんな素晴らしい作家さんがいらっしゃる地方なのになぁと惜しい気持ちです。

    1. ひろさん
      へえ~、そうなんだ!興味を持って頂いて嬉しいです。私も作家さんの作品を見て、その作品が私の知っている人に似ていたり、
      世界観が一致したりするところから、その作家さんを深く知りたいと思うタイプです。

      地方の小さい美術館だと、恐らく常設出来るだけの収蔵コレクションが無いのかもしれません。大きな美術館だと、
      コレクションを展示している常設展に、企画ものの特別展の2点セットが多いですね。
      最近は地方の美術館のほうが洗練されてきているような気がするので、地元の作家さんたちに盛り上げて欲しいです。
      でも、行政の予算で一番に切られるのは文化関連なのですよね・・・

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