クルマで巡らない「ふたつの旅」展

皆さんのクルマのタイヤ。

ブリヂストンだという方、払ったお金は美術品コレクションの一端を担ったかもしれませんよ?

東京駅八重洲口からすぐのところに、リニューアルオープンした石橋財団の美術館がある。名前は「アーティゾン美術館」。縦に長い設計なのでエレベーターに乗ったりするのはちょっと面倒だけれど、とにかくきれいだし学生は無料。今年度いっぱいの学割を使い倒すべく、夏休みに出かけて来た。しかしもう2か月近く前のことなので記憶が曖昧になってきている。

同郷で同世代の2人の近代作家を特集した展覧会。青木繁のほうは知っていたけれど、坂本繁二郎は知らなかったので興味深く見た。

青木繁と言えば『海の幸』。この作品、これまで図版でしか見たことがなく、かなりの大作だと思い込んでいたが、実際は意外と小さい作品だった。

私は現在卒業制作で群像画を描いているが、実はこの作品にも少々インスパイアされている。

横方向の動き。そして、ただ一人こちらを見ているのは当時の作家の恋人らしい。

青木繁の油絵は「胸焼け系」(勝手に命名)で、画面から立ち上ってくる空気が熱い。本人が東京美術学校(現・東京藝術大学)に残した自画像を見ても、わりと暑苦しい顔をしている。しかし28歳で夭折。私は日本画だけでなく、日本の近代洋画も好きでよく見るが、やはりまんま西洋の真似をしただけのものより、日本のエッセンスが(たとえアンバランスでも)感じられる作品が好きだ。以前見た「あやしい絵展」で初めて青木繁の作品を生で見て「意外と好きかも」と思ったが、やっぱり今回も好きだと思った。どこが好きなんだろう、と考えた時、全体的にきれいとは言えない画面かなぁ。「こう描けばこうなる」という計算を感じられないところかもしれない。

そして今回初めましての坂本繁二郎はと言えば、対照的に爽やか系であった。まずその色彩感。パステルカラーだ。素直に「わ、きれい」と口に出るくらい。馬を描いた作品が多いのだが、とにかく明るくてキレイなのだった。特にピンクがいい。

写真撮影OKの作品から、この能面シリーズを。こんなモチーフでも中間色の多用でふわふわっと柔らかい。好みかと言えばそうではないのだけれど、新鮮さはあった。色使いの自由さと言う点では参考になったし。ただ、この日の午前中にリヒターを見た国立近代美術館の常設フロアにて、日本の近代洋画コレクションも見てきたので少々物足りなさは残った。

ミュージアムショップはオシャレで気の利いたものが多い。クルマ関係のグッズがないか探したけれどさすがになかった。東京駅からのアクセスは良いので、また惹かれる展覧会があったら行きたい。