クルマで巡らない「NUDE礼賛 ーおとこのからだ」展

※この記事は性的表現を含みます。

2日に一度くらいの頻度で朝すれ違う白いセリカに乗った(見た感じ同世代の)男性が気になる。例えば毎朝同じバスや電車に乗るのなら、話しかけるキッカケみたいなのは自分脚本、監督、主演で仕込めそうだが、クルマですれ違うだけの場合のキッカケって何よ?と思う。パッシングするとか?窓あけて手を振るとか?ワイシャツにネクタイ姿でセリカ運転してるのめっちゃカッコいい。しかし、私も恋に恋する年頃などは大昔に過ぎている身、セリカ込みだからカッコいいということはわかっている。でも最初はセリカじゃなくてソアラかと思ってました。すみません。ふぐ先生に聞いてセリカだと知ったのです。セリカはリトラクタブルヘッドライトのイメージが強くて・・・

このタイプですな

かと思えば、ピアノの稽古の時に通る道沿いに、ローカルな運送会社がある。夕方そこで大型トラックを洗車しているお兄さんが素敵だ。長靴が似合う人はカッコいい。そして何より、仕事のクルマをきちんとキレイにしている姿が何よりカッコいい。

さて、古今東西、あらゆる表現において圧倒的に女性ヌードのほうが多いことは、美術を特に勉強していなくても容易に想像がつくかと思う。大小の美術館のコレクションから、そこいらに並ぶ本、画像、動画まで、女のハダカが溢れている。では男性ヌードはどうか?私もちゃんと美術を勉強する前は、ダビデとか、キリストなどの宗教画、あるいは三島由紀夫くらいしか思い浮かばなかった。が、古代ギリシャで最初に作られた彫刻は男性ヌードだったそうで、あのどこから見ても完璧なプロポーションは古代から現在まで西洋の美意識の根源になっている、と感じる。

私が実際に見てため息しか出なかった男性の体は、バレエダンサーのそれだ。特にベジャールバレエの有色人種の男性ダンサーたちの体はギリシャ彫刻そのままにしなやかで美しく、それ自体が高尚な芸術だった。ああああ(思い出しため息)。美し過ぎる体はエロ目線では見られないのだ。

が、何を「美しい」と感じるかは、人によって基準がまったく違う。だからこそ、今回のこの展覧会のワクワク感は桁違いだった。

SNSで、大好きな木村了子画伯がこの企画を告知されて以来、絶対に行かなくてはと思っていた展覧会。最終日にようやく飛び込めた。場所は秋葉原のDUB GALLERY。以前にもアキバで木村さんの作品を見たが、多分違う場所だ。アキバ駅前からすぐなのだが、辿り着くのがかなり難しい場所にある。しかもこの日は朝から上野で石膏デッサンを受講しており、かなりヘトヘトの状態でフラフラしながら入り口に辿り着いた。

ギャラリー内はこんな感じ。

ギャラリートークもあったので、2時間近くも滞在してしまった。こんなギャラリーでいつか自分の作品も展示してみたいなあ。

テーマは「男性の裸」なのだけれど、作者のジェンダー、セクシュアリティ、趣味嗜好が様々な上に表現方法も色々なので偏りがなく、とてもバランスが良いと感じた。気になった作品をいくつかご紹介。

左側。TORAJIROさん。マッチョな(でもちょっと愛らしい)男性に、これまた可愛らしい小動物の組み合わせが疲れた脳を癒してくれる。右側は大山菜々子さん。王道の日本画技法で、少年と青年の間の揺らぎの一瞬を捉えた作品を描かれる。「男性ヌード」と言っても作家さんによって世界観はまるで違うので、作品ごとに「へぇ」とか「わぁ」とか思わず声が漏れてしまう。

この日本画と日本男児の組み合わせの無敵の美しさよ・・・ひぃぃぃと心の中で叫びながら、目を皿のようにして見入ってしまった。ヘトヘトだったが完全に覚醒した。男性作家さんのみならず、女性の作家さんも圧倒的に美人画を描く方が多い。そんな中、この作品は完璧なまでに女性が描く美男画だ。この作品の写真を娘に送ったところ、「顔が国宝級」という返信が来た笑。確かにそうだけど、背景の絵具の美しさも素晴らしかった。

後述の木村了子さんの作品もそうなのだが、日本画だとギラギラした過剰なエロスにならないから落ち着いて鑑賞出来るのかも、と思ったりもした。

個人的に思い入れのある写真家の野村佐紀子さん。男性ヌードと言えばこの人。30年近く前、彼女の個展(確かデビュー展だったはず)へ行ったことを覚えている。アラーキーのお弟子さんとしても有名。こういう男の子たちは、かつて女の子でもあった私たちのまわりにもいたはずなのに、その時にはその魅力に気づかないものなのだ。

今回キュレーターもなさった、大好きな木村了子さん。このモデルさんは、女性のお尻を描く某絵描きさんらしい。おじさんも美しい作品になるという素晴らしいお手本。絵表装も素敵!!

立体造形作家の上路市剛さん。興福寺・南円堂の四天王がモチーフだそう。反対側にも2人おり、鑑賞者は真ん中にしゃがんで見るのがオススメとのこと。この凛々しいお顔は部屋に置いておきたい。悪いものが寄り付かなくなるパワーがあると思う。作家さん自身もスラリとしたイケメン。

腐女子画家の成瀬ノンノウさん。こちらも日本画技法で描かれている。BL日本画。日本画&美人、という組み合わせを見慣れているせいか、日本画&美男子という組み合わせがとっても素敵。お顔を覆う模様の意味をトークで伺った。私には腐女子要素はほとんどないのでこのモティーフには萌えないのだが、浮世絵の春画ジャンルにも衆道モノがあるし、美しい女性たちと同じく美しい男性たちの消費という意味ではBL日本画の説得力を感じた。銀箔に美男子だとこういう感じの画面になるんだなあ、と学びも入ったりして。

自分が日本画をやっているせいか、やはり日本画の作品を食いつくように眺めてしまう。いや、愛でてしまう。

木村了子さん。フォトスポットになっているこの屏風は、今年2月に金沢の21世紀美術館でも拝見した。その前に置いてある抱き枕にプリントされた作品も、nuranura展で屏風を拝見した。日本のイケメン画と言えば今や第一人者の御大とも言えるお方。イケメン仏画なども非常に美しく、自然に拝んでしまうので「ああ、人間は古来より美を崇拝する生き物なのだな」などと納得したりしてしまう。ご本人は最近は枯れた世代に惹かれつつあるとのことなので、今後の作品もとっても楽しみ。

他にも人形作品や絵画作品、映像作品など盛りだくさんな展示で、私にとってはそろそろ始まるトーハクの「国宝展」より価値があるんじゃないかと思った。

そして、最後は勇気を出して木村さんに一緒に写真を撮って頂いた。しかも撮って頂いたのは上路さん、、、恐縮と興奮が一度に。

それもあってかなりミーハーな気分で鑑賞を終えたのだけど、こんなワクワクは久しぶりでとても幸せだった。というのも、最近は悪い意味で目が肥えて、美術館やギャラリーで作品を鑑賞する時はものすごく真面目で硬いアタマになっていたのだ。構図がどうとか、どうやって描いたのかとか、絵具は何を使っているのかとか、そういう見方をすることが増えていた。もちろん、それを考えるのは大事なことなんだけれど、もっと無責任に好き勝手にドキドキしながら絵を見ていた昔の自分に戻れたような気がしたのだ。帰りの電車の中のあの満たされ感はそこから来ている気がした。そしてふと、この日自分が描いた石膏はヘルメスだったことを思い出し、そう言えばヘルメスもギリシャ男子なので相当なイケメンだったけど上手く描けてないよなぁ、と落ち込んだ。

授業や講座で描くのは女性のモデルさんなので(洋画コースには男性ヌードを描く授業があるみたいだ)、男性のモデルさんも呼んで欲しい。

何にせよ、やっぱり人間を描くのは楽しい。このような展示を見た後は余計にそう思うし、モチベーションにもなる。人間はみんな違う。外見も中身も違う。性別とか年齢とか人種とかそういう枠を超えて存在するのが本来だと感じた。とか言いつつも、やっぱり美しい男性はいいですなぁ♪

「クルマで巡らない「NUDE礼賛 ーおとこのからだ」展」に4件のコメントがあります
  1. このセリカカッコイイですよね!セリカの写真と共に「めっちゃカッコイイ」などメッセージを添えてプリントアウト、すれ違う時に掲げてみたらいかがですか?そして長靴が似合う人がカッコイイという感じ方もあるんですね。私は最近仕事先でボロボロの初代インテグラタイプRに乗る女性を見かけることが多く、どこのどちら様なの!?と気になっています。

    美し過ぎる体はエロ目線では見られないのだ。←とてもとても分かります!

    1. ひろさん
      メッセージボード作戦とは大胆ですね!(笑)何だろう、オフ会みたいな感じで集まってるクルマにはわざわざ「カッコいいですね」と声かけることあまりないのですが、道とかですれ違ったり見かけたりするクルマには言いたくなるこの症状…

      でも、キッカケはむずかしいですよね。相手が女性だと余計にかな?私はクルマを褒めて頂くのは365日24時間いつでもウェルカムですが♪

  2. その型式のセリカは4WDとFFの見た目がけっこう違うやつですね。4WDモデル(GT-Four)はWRCに出てたので当時はけっこう走ってましたよ。
    車同士のすれ違いですが、手を挙げるはけっこう相手も気付くんじゃないでしょうか。ロードスターはときたまヤエーされるのですが、けっこうわかるもんです。Zのお姉さんは目立つと思うので。

    1. リーパーさん
      もしセリカ氏と話す機会が訪れたら、真っ先にGT-Fourですか?と話しかけるネタにしたいと思います!
      手を挙げるのはハードル高いなぁ、、、うまく信号待ちなどで並んで止まれたら窓開けて「セリカカッコいいですね!」と叫ぶのになぁ
      ロードスターさんたちは仲間意識強そう。Zロードスターはそもそもいません…

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