化けて出る女

ここ最近、寝る前に小泉八雲作品集を読んでいます。

雪おんなや耳なし芳一が有名なスコットランド人(日本に帰化)。余談ですが、米国で高校生をやっていた頃、国語(つまり英語)の授業で耳なし芳一を英訳してクラスで発表したことがあります。「幕府」の的確な英訳がどうしてもわからなくて、Samurai Goverment とか書いてた覚えがあるなぁ。当時からあの話は好きだったんですよね。特に、芳一がじっと座って待っていると、甲冑のぶつかる音や衣摺れの音が聞こえてくるシーンがとてもロマンティックでね。

その他にも、日本の古典文学やら民話やら、「穏やかではない話」を読むようにしています。なぜ今になってそんな本を読んでいるのかと言いますと、2年後(予定)に控えた卒業制作のためなんです。その時になってパッと描けるものではなく、今からでもアイデアをたくさん溜めておかないと多分マズイ。基本的に自由制作なので(先生の事前審査はありますが)、各自描きたいものを選んで描くんですが、今のところ構想している私の主要テーマは「女にとり殺される男」。あはは〜

日本のお話の中で、そのような男性を探しております。

 

 

とり殺される男の昔話をご存知の方は私までご一報ください笑

 

化けて出たり取り憑いたりする異形のものは美しい女であることが前提なお話が多いのですが、実際はどうだったんでしょうね。最初に思いつく「取り憑く女」は源氏物語の六条御息所ですが、彼女は美しさと知性を兼ね備えた貴婦人として描かれてます(ついでにプライドも高いのでああいう結果に)。彼女が取り憑くのは愛する光源氏の正妻だったり愛人だったりです。そして、八雲の作品の中にも死んだ先妻が後妻に取り憑いて惨殺する話があるのですが、「復讐は男に向かってやるべきだ」「男はみなそう考えます。しかし、それは女の感じ方ではありません」なんて男同士の会話が出て来ます。

これは正論。
現代でも男が浮気した時、女は相手の女を憎みます。例えば夫の不倫が発覚した場合、妻は相手の女をやっつけたいと思うようです(法的に訴えることも出来ますしね)。ほとんどが男からの誘いで始まる関係なのに、妻は夫よりも相手を責めるのが世の常です。そこで林檎の「名うての泥棒猫」ですよ笑。「勝手に舞い込んで来たもの」「勝手に擦り寄って来たもの」なのに、まるで手練手管で誘惑して落とした悪女みたいな言われよう。まぁ中には確信犯もいるかもしれませんが、始まりがどうであろうと女の敵は女、ってことですかね。それは昔も今も変わらないようです。

「どちらかの気持ちが冷めたらその関係は終了」という信念のもとに生きてきた私には理解しづらいシチュエーションではありますが。

さて、私は女に生まれて良かったと思って生きていますが、自己世界の表現は男性を描きたいと思ってます。だから、「取り憑く女」より「取り憑かれた男」のほうに惹かれます。どこか情けなくて、優柔不断で、とり殺されるほど魅力的だということです。代表格は「道成寺」に登場する安珍くんでしょうかね。大蛇と化したスーパーストーカー清姫に焼き殺されてしまいます。他にも「牡丹灯籠」の新三郎とか「惚れられて執着された挙句」のパターンですね。四谷怪談の伊右衛門は自ら手を下しているので自業自得かもしれませんけども。お岩が正しいと思います。でも、お岩には恨めしい気持ち以外に愛はあったんだろうか。生前はともかく。

好きになっても相手にあまり執着しない(上に書いたように、気持ちが一方通行なら終わりだと思っているので)私には、とり殺すほど惚れるということが理解出来ないんですが、とても魅力的なテーマだと思っています。それを表現出来るかどうかはまだわかりませんが、とりあえず来年次からは男性の人物写生を頑張りたいと思います(決意)。

色々な年代のパターンのスケッチをしたい・・・そこの貴方、モデルをお願いするかもしれませんよ?

「化けて出る女」に2件のコメントがあります
  1. お化けの絵が怖いです。笑 ツーリングの時に人を撮る機会が増えるのでしょうか。楽しそうです。笑

    1. 色々な年代の色々な人を一度に撮れるのは・・・ツーリングやオフの時は当然チャンス!覚悟しててくださいね笑。表に出すようなものではなく、私のスケッチの資料となるだけなので安心してください。
      昔の絵は怖いです。お化けの他にも「血みどろ絵」というジャンルがあり、江戸の人々の好奇心や怖いもの見たさを満足させていたんだろうと思います。

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