アメリカ人ですら堅物に見せるフランス人
フランス人×アメリカ人の組み合わせって、なぜこうも可笑しいんでしょうか。
私の好きな映画でも、その組み合わせはたくさんあります。そして、皆どこか微笑ましい。アメリカ人もフランス、そしてパリに憧れを持っているんですね。フランス人もひと昔前まではアメリカ的なものをバカにしていたようですが、今はどの家庭にも普通にコカコーラがあるしハンバーガーも食べるようです。フランス人は英語を話さないとかも言われていましたが、「Bon weekend」って普通に言いますしね。そう言えばNYの「自由の女神」も「独立100周年おめでとう!」のプレゼントでした。極東から見ると、相思相愛のように見えますけど。
今回はフランス男×アメリカ女の組み合わせ。それも、典型的な。あのコッポラ監督の奥さんであるエレノア・コッポラ監督作品「ボンジュール、アン」。
原題は「Paris can wait」。パリは待っててくれる。
映画の地カンヌからパリまで、ひょんなことから夫の仕事仲間であるフランス人ジャックとドライブすることになった主人公アン。映画プロデューサーである夫は多忙の身。家庭や身の回りのことはすべて妻であるアン任せ。アンは不幸ではないけれど、子供も手を離れた今、そんな自分の立場があまり心地良くありません。
ジャックは自分の国フランスとフランス文化とフランス食と女性を愛する、絵に描いたようなフランス男。アンは最初はジャックのペースについていけません。あのアメリカ人でさえ堅物に見えてしまう、それがフランス効果。
彼らの対比で印象深いシーンは、ジャックの愛車が動かなくなった時のこと。上記予告にも出てくるシーンです。
「メカはまったくダメなんだ」とお手上げのジャック。クルマに山のような薔薇の花束を積むことは出来ても、修理は出来ないみたい。しかしアンはエンジンルームをチェックし、外れたファンベルトを見つけ出し「ファンベルトのせいね」と。さらに「Youtubeで見たの」と言って自分のストッキングを脱ぎ、それをファンベルトの代わりにします。さすがアメリカ女。
結局、このクルマは途中で修理工に預け、レンタカーであるカングーでドライブが再開されるのですが、好きな音楽も聞けて快適なカングーの中でアンは大喜び。一方、ジャックのほうは「食欲が減退するクルマだ」と文句タラタラ。このあたりもフランス人的、そしてアメリカ人的な感性の差がわかりやすく強調されていました。
クルマたち
この映画は確かルノー・ジャポンが宣伝していたのを見て知ったのですが、まず出て来るのがこのルノー。カンヌの高級ホテル「ベル・リーヴ」からカンヌ・マンデュリー空港まで2人を運びます。Fugupediaに確認したところ「エスパス」。日本では現在正規輸入されてないですよね。何とも形容し難い形をしています。
次はプジョー。Fugupediaにたずねると「504カブリオレ」とのこと。色男のクルマとして登場。途中で故障しちゃうけど。
こんなオープンカーでフランスの田舎を駆け抜けたらそりゃ気持ちいいでしょうよ。絵になってました。そして隣には自分をお菓子の名前で呼ぶ男・・・そう言えば、以前少しだけ付き合ったことのあるフランス男も私をとある食品の名前で呼んでいた・・・今思うと非常に恥ずかしい。
そして最後は、色男に「食欲が減退する」と言われてしまったカングー(画像無し)。
観光映画。それ以下でも以上でもない
映画作品としては、「人生ってまだまだステキ」という恐ろしく薄っぺらいコピーが暗示している通り、実際この映画が勇気とか夢を与えてくれるってことはなく、ただひたすらフランスの美しい風景、美味しそうな食事、そしてフランス男の甘い感触を味わうためだけの映画だと思います。最後にパリに到着した時は私も「これで映画が終わる!」とほっとしました。そして、正直、ラストシーンのあとアンとジャックがどうなろうが知ったこっちゃありません。主人公2人の関係に興味が持てないのです。むしろ、それが狙いなのかも。本当の主役はドライブコース上の美しい風景かもしれません。ただ、女にはいくつになっても女としての時間が必要だということは同感出来ました。そしてそれは多くの場合、日常から離れたところにあります。
アレック・ボールドウィンの横幅が増えていたのにビックリしましたが・・・。ダイアン・レインは私が思う美人とはタイプが違いますけどキラキラしてました。「トスカーナの休日」でも再出発する役でしたね。観光スポットを次々とジャックが紹介してくれる観光映画です。それしか心に残らない。だから、何も考えずに観光客気分で観るのが正解。劇中に出てくるマネ作「草上の昼食」はわりと好き。オルセー美術館で観られます。