Empress Orchid 皇后の蘭
当分、新しい色モノは要らない。
と思っていたのに、限定発売のADDICTIONルージュパレットの情報が入ってきました。赤のヴァリエーションを揃えた、その名も「Empress Orchid」。これはもしや・・・?と思い調べてみると、案の定。映画The Last Emperorからインスピレーションを得たコレクションとのこと。
何を隠そう、私は清朝が大好きです。
どれくらい好きかと言うと、生まれ変わったらなりたいもの3つの中の1つに、「清朝の皇帝の第3夫人くらいの身分」というのがあります。正妻はあらゆる面で面倒。側室上等!
もっとも好きなのは光緒帝の時代(在位1875〜1908、後半はほぼ監禁幽閉状態)ですが(没後100年にあたる2008年の調査では、毛髪から大量のヒ素が検出され、毒殺説がほぼ決定的に)、そのすぐ後の溥儀つまりラストエンペラーの清朝の終焉くらいまでが私の興味範囲です。このあたりの有名人と言えば圧倒的に西太后なんですけど、書物なども一通り読みましたが個人的にあまり興味が持てません(光緒帝を殺せと命令したのは彼女だとは思う)。あのあたりは男性(宦官含む)のほうが面白いキャラがたくさんですよね、切れ者の宮廷大臣VS科挙をくぐり抜けてきた百戦錬磨の官僚、とか。中でも李鴻章が素敵です。李さま、そう言えば香港は約束通り中国に返還されちまいましたよ。
Empress Orchidと聞くと、思い出すのは映画でのワンシーン。満州国皇帝即位記念パーティで夫・溥儀がチヤホヤされている間、放置されてる妻・婉容が活けられた花をむしゃむしゃ食べる場面。バックには壮大な皇帝円舞曲が流れ、美しい女が狂気をむき出しにする大好きなシーンです。ジョアン・チェンが本当に美しくてエロくてねぇ。甘粕大尉役の坂本龍一も不気味で良かったですね(音楽は言わずもがな)。
ということで、Empress Orchid、売り切れる前に手に入れなければ!と即買いしました。満足です。
The Last Emperorと紫禁城
映画の話をもう少し。
ベルナルド・ベルトルッチ監督作品「ラストエンペラー」(1987年)。
言わずと知れた有名作品ですが、大好きです。特に、紫禁城のシーン全部が。語ると恐ろしく長くなるので割愛しますが、私が紫禁城好きになったキッカケでもありました。リアル紫禁城でロケをした、というのも今では貴重です。
私が初めて北京を訪れたのは15歳の時。渡米する前の年の春休みだったと記憶しています。初海外で中国って珍しいねと言われますが、初海外でユーゴスラヴィアという友人がいますから、それに比べたら普通です。
以来、北京は5回ほど訪れています。訪れるたびに必ず向かうのは当然、紫禁城。1日かけて隅から隅まで、立入れるところは歩き回ります。
普通の観光客は南から北へまっすぐ歩いて行くパターンが多いのですが、私は後宮も出来るだけ探検するようにしています。
婉容ちゃん
溥儀の正室・婉容は皇后だったわけですが、悲劇的な人生でした。お役人のお嬢様だった彼女は天津で西洋の知識や文化に触れて育ち、モダンなセンスを持ち、溥儀と結婚すれば一緒にイギリスへ留学出来ると信じてお嫁に来たのですが、待っていたのは鳥かごの中の生活。まもなく清朝は滅亡、溥儀は関東軍に騙されて満州国の傀儡皇帝になっちゃうし、夫婦関係は破綻しているも同然だし、寂しさから他の男と関係して出産するも子供は始末されるしで、アヘンに依存。最後はアヘン中毒で精神に異常をきたして孤独のうちに亡くなります。
もともと好奇心と上昇志向の強い女性が、よりによって世界でもっとも窮屈である「宮廷」という場所に入ったら・・・例えばスケールは違い過ぎますが、やりたい仕事があるのに無理やり専業主婦として家庭内に押さえつけられていたら・・・と考えると、彼女に同情せざるを得ません。だって彼女は外国に行きたいがために溥儀と結婚したのですから。でも、時代も彼女の味方をしませんでした。
「こんなはずじゃなかった」って何万回も心の中で思ったことでしょう。そんな彼女を私はとても好きです。
東洋の宝石
化粧品に戻りますが、アイシャドウなどもEastern JewelとかShanghai Breakfastとか、それらしきネーミングがつけられていて、素敵。いくら何でも高過ぎるから買わないけど。
ちなみに映画の中でEastern Jewelと呼ばれていた川島芳子(本名:愛新覚羅顯㺭つまり生まれは愛新覚羅家のお姫様)はスパイとして名を馳せていますが、この方も非常に美しい方です。男装というか軍服姿も素敵なのですが(ご興味のある方はwikiを)、私はこの写真がお気に入りです。気品がすごい。彼女の最期は銃殺刑でしたが、生存説もあったようですね。
清の時代を遡れば、過労死した皇帝として有名な雍正帝(在位1723〜1735)も好き。仕事のデキる腹黒そうなメガネのおっさんで、けっこう私のタイプだった気がします。会ったことないけど。初代のヌルハチさんの時から、これでもかってくらい個性豊かな濃い皇帝たちが続くのも清朝の魅力です。夷狄の王朝というのも。でも辮髪はいかがなものか。それと、彼らは外見重視ではなく血筋や家柄で奥さん方を堅実に選んでいたのも、色気はあまりないけど合理的。
読み易くて清朝の流れや主要登場人物がよくわかるのは、浅田次郎著「蒼穹の昴」。私は初めて読んだ時、イッキにいきました。止まらなくて。おすすめです。一方、その頃の日本が舞台である司馬遼太郎著「坂の上の雲」もそろそろ読んでみたい。
また、北京に行きたくなってきました。